ガソリンでも水素でも走れるマツダ「RX-8ハイドロジェンRE」の公道試験をスタートした2004年【今日は何の日?10月27日】
一年365日。毎日が何かの記念日である。本日は、マツダがガソリンと水素の両方を燃料として走行できるデュアルフューエルシステムを搭載した「RX-8ハイドロジェンRE」の公道試験を開始することを発表した日だ。最近注目が高い水素エンジンだが、マツダは20年以上前から実用化に向けて積極的に取り組んでいたのだ。 TEXT:竹村 純(Jun TAKEMURA)/PHOTO:三栄・マツダロータリーのすべて、清水和夫(SYE)、clicccar ■デュアルフューエル・RX-8の実走行試験スタート マツダRX-8ハイドロジェンREの詳しい記事を見る 2004(平成16)年10月27日、マツダはデュアルフューエル(ガソリン&水素)システムを搭載した「RX-8ハイドロジェンRE」の公道試験を開始することを発表。実車の公道試験は、さまざまな環境条件や道路状況の公道試験を行うことで、各種システムの信頼性を高めて実用化を目指すのが狙いである。 マツダの水素ロータリーエンジンの歴史 マツダにおける水素ロータリーエンジンの開発の歴史は古く、初めて公表されたのは1991年の東京モーターショーで展示した水素ロータリーエンジン車「HR-X」である。1993年には、第2号車となる「HR-X2」とユーノスロードスターに水素ロータリーエンジンを搭載した「ロードスターHV(Hydrogen Vehicle)」を公開し、日本自動車研究所(JARI)で走行会を行った。 1995年になると、「カペラ・カーゴHV」が水素自動車として国内初の大臣認定を取得。公道での走行試験を行い、4年間で約4万kmを走行して実績を残した。その後、経営不振やフォード傘下への体制変更によって、水素ロータリーエンジン車の開発は一時的に停滞した。 しかし、2003年のロータリー車「RX-8」デビューを機に、水素でもガソリンでも走れる“デュアルフューエルシステム”の開発に着手したのだ。 RX-8ハイドロジェンREのベースとなったRX-8 マツダは、1967年に「コスモスポーツ」でロータリーエンジンを世界で初めて量産化した。以降、高性能のロータリー車を次々と市場に投入したが、排ガス規制対応や市場の燃費志向の高まりを受けて、1980年代後半から徐々にロータリー車は敬遠されて市場から淘汰されるようになった。 そのような中で、ロータリースポーツRX-8が2003年にデビューした。RX-8は、Bピラーレスの観音開きの4ドアのダイナミックなスタイリングを採用し、RENESIS(13B654cc×ローター)ロータリーエンジンを搭載。RENESISは、全域で高性能を発揮するシーケンシャルダイナミックエアインテークシステム(D-DAIS)を採用し、NA(自然吸気)ながら最高出力250psを誇った。 しかし、スポーツカー市場が冷え込んでいたこともあり、RX-8は2012年に生産を終え、結果として最後のロータリーエンジン車となった。ちなみに、2023年11月にロータリーエンジンを発電機として使う「e-SKYACTIV R-EV」を搭載したコンパクトSUV「MX-30」でロータリー復活を果たしたが、これはロータリーエンジンを主動力としないPHEVである。 RX-8ハイドロジェンREは公道試験を経て、リース販売を開始 上記のRX-8をベースにしたハイドロジェンREは、RENRSISロータリーエンジンのガソリン噴射に加えて、1ローターにつき2本のガスインジェクターを装着して水素を直接噴射。ガソリンでも水素でも走行可能で、運転席のスイッチで燃料を切り替えることができる。 110L(35MPa)の高圧水素タンクと61Lのガソリンタンクを搭載し、水素使用時の最高出力109ps/最大トルク14.3kgm、ガソリン使用時は210ps/22.6kgmを発生。また、航続距離(10-15モード)は水素使用時100km、ガソリンでは549kmを達成した。 デュアルフューエルシステムは、CO2排出量ゼロの水素エンジンとガソリンロータリーエンジン特有の力強い走りを両立させ、水素の充填ができない環境下でも、ガソリンで走れることが大きなメリットである。RX-8ハイドロジェンREは、2004年に国土交通大臣の認定を受けて10月のこの日から公道試験をスタートした。 2年後の2006年には、エネルギー関連企業や広島県など地方公共団体へ42万円/月でリース販売を始めた。 ・・・・・・・・ 2020年以降、多くのメーカーによる水素エンジンの市販化を前提した発表やレースへの参戦などによって、水素エンジン車が脚光を浴びるようになった。カーボンニュートラルには、EV一辺倒でなく、水素エンジンや合成燃料、バイオ燃料の利用など内燃機関も含めた全方位の対応が必要だというのが、最近の自動車メーカーの姿勢だ。 毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。
竹村 純