税理士「さすがに税務署から『安すぎる』と指摘されてしまいます」…会社を「1,000万円」で譲ろうとした70歳社長の“誤算”
事業承継は「株式評価」から始めると効率的
中小企業庁がまとめている「中小企業白書」によれば、全国の中小企業の後継者不在率は約6割です。「後継者不足」が中小企業の事業承継の大きなハードルであることは間違いありませんが、必ずしもそれだけが理由ではないと考えます。 経営者の年代別に見た事業承継の意向や後継者の選定状況に関する調査において、60歳代の35.9%、70歳代以上の28.5%が「未定である・分からない」と答えています。つまり、何から始めればよいのか進め方が分からないのです。 事業承継は「経営承継」(=社長の地位の承継)と「株式承継」(=株主の地位の承継)の2つから構成されており、それぞれ多くの検討事項があります。加えて、会社オーナーの相続といった個人の論点も含めて検討する必要があります。いずれもバランスよく進めることが望ましいですが、まずは株式評価に取り組むことが効率的です。 株式を評価すると事業承継のキーワードが次第に見えてきます。例えば経営者の相続。株式を相続した後継者には相続税がいくらかかるのか、後継者以外の相続人に遺せる財産は確保されているのか。どんどん課題が見えてくるので、その都度解決していけばよいのです。 また、株式評価は「課題の早期発見」にも役立ちます。佐伯さんの場合、株式評価に取り組んだ結果、「売買価格」や「上原さんの心理的負担」がハードルとして顕在化しました。もっと早い段階で株式の評価額を把握できていれば事前に何らかの対策を講じることができたかもしれませんし、上原さんも心の準備ができたかもしれません。 事業承継は企業が中長期的な視点で取り組むべき重要な経営課題です。経営者の皆さんは適切な相談相手を見つけるとともに、株式の評価額を定期的に把握しておくことが望ましいでしょう。 岡本 啓司 税理士法人プレアス 代表 税理士 小池 俊 税理士法人プレアス 副代表 兼 東京支社長 税理士
岡本 啓司,小池 俊,税理士法人プレアス