アコードの“今”と“未来”とは? ホンダは“ファン”と“伝統”を見捨てない(かもしれない)
まもなく新型が上陸するホンダ「アコード」の日本市場における存在意義とはいかに? 現行モデルに試乗した大谷達也が考えた。 【写真を見る】新型アコードなどの詳細(85枚)歴代モデルの貴重写真も!
今乗っても悪くない
2024年の春にはフルモデルチェンジを受けた新型が国内でも発売されるホンダ・アコード。でも、ややへそ曲がりな私は、このタイミングで敢えて現行型アコードに試乗して、アコードのこれまでの足跡と今後の行方について考えてみることにした。 現行型アコードの国内発売は2020年だったから、その直後に試乗したときの印象はいまでもよく覚えている。クーペライクな外観とは裏腹に、乗り心地はソフトで快適。しかも静粛性が高く、ハンドリングも正確だった。ただし、この時期はホンダのハイブリッドシステム「e:HEV」がやや未成熟で、坂道を登り続けるような状況ではエンジンがザワザワというノイズをたててやや騒がしかったことを記憶している。 つい先日ステアリングを握った現行型アコードの印象も、これと変わらない。ただし、今回は市街地のみの試乗だったので、エンジンノイズが高まる状況に遭遇することなく、クルマの全般的な印象は前回よりもむしろ良好で、2023年のいま、このまま販売しても十分に通用する商品力を有していると感じた。 そんなアコードの最大のライバルといえば、トヨタ「カムリ」だろう。間もなく国内生産が終了する現行型カムリがデビューしたのは2017年。でも、発売間もないカムリに試乗して、私はガッカリした。サスペンションの動き方がぎこちなくて、路面からのゴツゴツとした感触が、思いのほか明確に伝わってきたからだ。 その後、足まわりは少しずつしなやかになってゴツゴツ感も薄れていったが、アコードほど良質な乗り心地を体験したことはついになかった。したがって、エクステアリアデザインはなかなかエッジーで格好よかったけれど、クルマとしての洗練度はいまひとつというのが、私のカムリに対する評価だった。 それでも、セールスはカムリのほうが好調だった。たとえば2023年上期の国内販売(日本自動車販売協会連合会調べ)でいえば、カムリが月販800台ほどだったのに対し、アコードは200台前後だった模様。2022年のグローバルなセールスでも、年間50万台を切っていたアコードに対してカムリは70万台に迫る台数を販売したようだ。 もっとも、ここで私が申し上げたいのは「仕上がりのいいアコードよりもカムリのほうが売れていたなんて、けしからん!」ということではない。皆さんに注目いただきたいのは、カムリは今年12月の国内生産終了をもって販売も終了となる見通しであるのに対して、アコードは前述のとおり新型になってからも継続販売される点にある。つまり、売れているカムリの販売が打ち切られて、売れていないアコードの販売が続くという、なんとも奇妙な結果となったのだ。