革靴職人目野健太氏に聞く、「Orphée(オルフェ)」ビスポークシューズの世界
仮縫い靴とハンドソーン・ウェルテッド
オーダー靴ならではのものとして、“仮縫い靴”というものがある。またこれはオーダー靴に限ったことではないが、Orphéeのすべての靴が“ハンドソーン・ウェルテッド”という製法で作られている。この2つのに関しても、ぜひこの機会にお話を伺がおう。
「木型やデザインが決まると、仮縫い靴でお客様の履き心地を確認していただきます。仮縫いとはいえ本縫いで使う革の張力とかけ離れてはいけないので、フランスのタンナーの革を使っています。フィッティング後、多くのチェック項目を確認したあとで、つま先部分を切り、しかるべきところに足があるかを確認します。こうして、その結果を元に本生産に入るという流れです」
「底付けの製法はハンドソーン・ウェルテッドといいまして、牛のショルダーの厚い革に木型を当てて裁断し、中底(インソール)を作る作業からはじまります。出来上がると見えなくなってしまう部分ですが、構造の美しさが、見た目と耐久性に関わってくるので、革靴の心臓部だと思っています。
この製法の革靴は、よく『ソールの返りがいい』という表現をされますが、これは中底の素材のしなやかさによるもので、足に馴染む感覚を特に感じてもらえます。
この履き心地のためにこの製法でやっているというところもあるほどに、中底にこそ手で作る価値があると思っています」
「ボーエ・モーエンセン」の椅子からインスパイアされたオリジナルの木型
Orphéeの靴の個性を大きく印象付ける要因のひとつとして、木型がある。この木型にまつわる話はブランドを語る上では避けては通れないという。 「ビンテージの北欧家具を扱うお店のオーナーさんがBESPOKEで靴を作りにいらしてくれたのですが、その際に『ボーエ・モーエンセン』というデザイナーの『J39』という椅子を見せられ、『この椅子のようなフォルムの靴を作ってほしい』という依頼がありました。それを僕なりに解釈して、作り上げたのが、いまOrphéeのベースラストとなる木型になっています。 椅子の足の直線的で、太くて穏やかな丸みという特徴は、田舎臭さもあるのにどんな空間に持っていってもスッと馴染む感じがするのですが、そのエッセンスを革靴に落とし込んだ際につま先の形で表現しました」