女子フィギュア界にトリプルアクセル時代は到来するのか?
フィギュアスケートの世界選手権が中国の上海で開幕、明日26日には、女子シングルのショートプログラムが行われる。 日本からは、先の四大陸選手権で2位にはいった宮原知子(16歳、関大高)と同3位に入った本郷理華(18歳、愛知みずほ大瑞穂高)、ソチ五輪経験者の村上佳菜子(29歳、中京大)が出場するが、その前に大きく立ちはだかるのが、共に欧州選手権でシーズンベストスコアの200点超えをマークして表彰台を独占したロシアのエリザヴェータ・トゥクタミシェワ(18歳)とエレーナ・ラジオノワ(16歳)。そして、そのトゥクタミシェワが、明日、女子フィギュアに新たな歴史の1ページを刻むかもしれない。ショートプログラムで浅田真央以来となる難易度の高いトリプルアクセルに挑戦するのだ。 トゥクタミシェワは、天才少女としてジュニア時代から評判だったが、スランプに陥ってソチ五輪では、まさかの代表漏れ。だが、ソチの金メダリスト、アデリナ・ソトニコワが故障、キャンドルスピンが代名詞のユリア・リプニツカヤが調子を崩したシーズンに復活して輝きだした。プログラムの完成度の高さと豊かな表現力に加えて見栄え点で加点を稼ぐジャンプ技術でGPファイナルを制した。その勢いにのって、ついに4年前から取り組んでいたトリプルアクセルを本格的に解禁しようとしているのだ。
数年前から彼女のトリプルアクセルの練習映像が投稿サイトにアップされるなど、ファンの間ではトリプルアクセルジャンパー予備軍として有名だったが、これまでは公式戦でプログラムに入れるような余裕がなかった。だが、今シーズンは、やっと、その環境が整った。 すでに2月のドイツのバーバリアンオープンでもショートプログラムの冒頭ジャンプに入れ、惜しくも転倒したが、公式記録上は「認定」されている。まだ公式戦での着氷はないが、練習ではかなりの高い確率で成功するレベルにまで進化していて、この日、行われた公式練習でも着氷に成功した。明日のショートプログラムにも、冒頭のジャンプに、その大技を組み込んでくるという。 もしトリプルアクセルに成功すれば、浅田真央以来の快挙。1988年に始めて成功した伊藤みどりさんを筆頭に、トーニャ・ハーディング、中野友加里さん、リュドミラ・ネリディナ、浅田真央と、過去に5人しか公式戦では成功していないトリプルアクセルジャンパーの仲間入りとなる。 元全日本2位で現在インストラクターとして後身の指導にあたっている中庭健介氏も「トゥクタミシェワは、すでにトリプルアクセルを練習では降りています。おそらく世界選手権でもプログラムに入れてくるでしょう。これからは、世界のトップを争うには、3回転―3回転は、もう当たり前の時代で、次のオリンピックで勝つためにはトリプルアクセルが必須になってくると予想しています。今大会も四大陸よりもレベルの高かった欧州選手権で表彰台を独占したロシアの壁を日本勢が崩すのは容易ではないと思います。日本勢が今後、ロシアの上をいくためには、トリプルアクセルというような武器を磨かなくては、歯が立たなくなります。現状では、樋口新葉さんが4回転に挑戦中と聞いています。次のオリンピックでは、日本からも浅田真央さんに続きトリプルアクセルを成功させる選手が出てくる可能性は十分にあるでしょう」と見ている。 トリプルアクセルの基礎点は、8.50と高いため、これを会得することは、他選手の追随を許さぬ“絶対的な切り札”を手にするようなものだ。トゥクタミシェワが挑戦するトリプルアクセルの成否が、女子フィギュア界の未来を占うことになりそうである。