「新NISAをやればお金が増える」と信じてたのに…専門家らが初心者に勧める「オルカン一択」の落とし穴
■「株の世界」の見え方はガラッと変わる なぜ資産運用には長期的な視点が重要なのか。過去の運用成績グラフで体感してみましょう。 まずは、2024年年初来の運用成績を見てみましょう(図表1)。全世界株式(MSCI ACWI除く日本)、S&P500、TOPIXの3指標は、7月までは順調に上昇しているように見えます。しかし8月には急落、特にTOPIXの落ち込みは顕著です。米国の景気減速懸念が強まったほか、円高・ドル安が株価の重荷となったためです。 8月以降もTOPIXは乱高下しているように見えますが、全世界株式やS&P500は、さほど8月以前のトレンドと変わりません。 次に少しズームアウトして、直近3年の運用成績を見てみましょう(図表2)。3指標ともコロナ禍を経て世界経済の回復とともに株価も回復している様子がうかがえます。 ■2024年の乱高下は実は大したことない 最後に過去20年間の運用成績を見てみましょう(図表3)。TOPIXは成長が緩やかであった一方でS&P500や世界株式は比較的好調な成績を維持しています。 全体的に下落が目立つのが、2020年のコロナショック時です。2024年の運用成績は、思ったほど乱高下していないと思いませんか? 短期的な変動も長期的に収束していくことがわかります。 市場の変動を見て、「今はもうやめたほうがいいのではないか」と思うのは自然な反応ですが、20年間の長期視点で見ると一時的な揺らぎに過ぎないことが多いのです。
■長期視点と同じくらい重要な考え方 アセットアロケーションとは、自分の資産をどんな金融資産(アセットクラス)にどのように配分(アロケーション)するかを決定することです。実は、運用リターンの8割はアセットアロケーションで決まると言われています。 もともとアセットアロケーションは、アメリカの経済学者ハリー・マーコウィッツが提唱した理論です。1990年にノーベル経済学賞を受賞し、長期投資において最も安定的なリターンが得られると理論的に証明されました。 土台となるアセットクラスは、株式、債券、不動産投資信託(REIT)などで、さらに国内・海外に配分します。リスクを分散しながら最適なリターンを目指します。 具体例として、私たちの公的年金をみてみましょう。年金積立金は、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が管理・運用しています。GPIFも長期的な観点から基本ポートフォリオを策定しています。この基本ポートフォリオは、マクロ経済や市場の動向を注視しながら、想定した運用環境から乖離がないか検証を行い、必要に応じて見直しをしています。 ■債券を組み入れる3つのメリット 組合せのポイントは「相関関係」です。値動きが違う資産を組み合わせると、より小さなリスクで収益を目指すことができます。たとえば、株式は好景気であれば上昇しやすく、債券価格は下落(金利は上昇)しやすくなります。不景気時は、逆の現象が起きやすくなります。一方、不動産は遅効性があり、株式より少し遅れて価格が変動する傾向にあります。 私はもともと金利・債券が専門です。債券は ・価格変動の特性における株式との相関性が低い ・価格変動を抑えながら利金収入を得られる ・満期まで保有すれば元本が返ってくる といった理由から、ポートフォリオのクッション材として、株式と一緒に組み入れる運用を推奨しています。ただ、債券のメリットや有効性に疑問を感じる人は、代わりに円預貯金を組み入れてもよいでしょう。