「今年は違う」 ヤクルト・並木秀尊、戦々恐々… サニブラウンに勝った男に勝った男が一皮むけた秋
◇記者コラム「Free Talking」 森の木々が赤く染まる秋の行楽シーズン。冬の訪れを前にしたプロ野球界では来季に向けた準備がすでに始まっている。野球に疎い人から「キャンプは春だけじゃないの?」という声をしばしば聞くが秋にもある。ヤクルトは11月2日~17日に松山市の坊っちゃんスタジアムで秋季キャンプを実施。若手主体のメンバーが新たなシーズンへの土台を築く鍛錬の場で精力的に汗を流した。 プロ4年目の並木秀尊外野手(25)は初日に「今年は違う」と“異変”を感じていた。いきなり戦々恐々となった理由は、夏休みの部活動をほうふつさせるような猛練習だったからだ。走り込みやウエートなどのトレーニングがボリュームアップ。野手は3カ所をローテーションして、それぞれ30分の打ち込みをするなど、とにかくバットを振りまくった。 そのしんどさは並木が「バットを握りすぎて握力がなくなった。人生でこんな経験はない」と振り返るほどだった。そんな厳しいトレーニングは血となり肉となった。キャンプ中盤には「振る力がついた。量を振ってる分、自然と体がやりたいことに近づいてる」ことを実感。「充実してる秋なのかな」と目尻を下げた期間で打球速度は3キロほどアップしていた。 並木の持ち味は脚力。かつて「サニブラウンに勝った男」の日本ハム・五十幡に50メートル走で勝ったことがあり、「サニブラウンに勝った男に勝った男」と話題になったこともある。同学年で出身地も同じ埼玉県の五十幡は、今回のプレミア12で日の丸を背負って戦っている。「いずれ自分も脚力でジャパンに入りたいと思わせてくれるような活躍をしている。本当に刺激をもらってます」。物腰柔らかなおっとり口調から並々ならぬ対抗心がにじんでいた。 ヤクルトは2年連続で5位に低迷。今回のキャンプは高津監督が就任してからの5年間で最もハードなものだった。それでも、戦力の底上げを目指す指揮官は「いやー、まだまだだね。ぬるいところがあるかな」と手厳しかった。一冬越えれば春季キャンプが待っている。秋に一皮むけた並木が、春にもう一皮むけて、外野のレギュラーを勝ちとれるか注目したい。(ヤクルト担当・小林良二)
中日スポーツ