出家シーンでは実際に剃髪したが、「不思議な体験でした」と振り返る。剃っている様子が目に入るわけでもなく、ショリショリと音がするだけで、最初は何も思わなかったというが、手の甲に髪の毛が落ちてきたときに実感がわいた。クランクインは昨年５月。「一気にぐっときました。これに向けて、ずっと髪を伸ばしてきた。その歴史を感じずにはいられなかった」

坊主頭は気に入っているといい、「快適です。できたらこのままでいい」と話すほど。11月1日放送のＮＨＫの情報番組「あさイチ」には、坊主頭で出演し、反響を呼んだ。父親で俳優の柄本明も坊主頭に驚いていたという。「家でテレビをみていたらガチャっと扉が開いて。僕のこの頭を見て絶句してました」

■衣装やセットに助けられ

平安の優美な世界を表現した美術セットも話題になった。印象に残るセットに、まひろとの逢瀬に使われた「廃邸」をあげる。「一晩くらいで池ができてしまう。美術部さんの技術力をすごく感じました」

平安貴族を演じるのに、メークやセット、衣装の力は大きかった。「作りこまれた世界があるから、あまり時代劇だと意識せずに演じることができて、助けられました」

10月25日にクランクアップを迎えたが、「放送が残っているのでまだ実感がない。現場が終わっているさみしさは多少あるんですが、作品はまだ続いている感じです」。

準備期間を入れて2年以上を過ごしたチームとは絆が生まれた。「大石先生の難しい脚本にみんなで向かっていくし、助けてもらえた。これからもいい意味で甘えることができたらいいなと思います。この現場で培われたスタッフさんたちとの関係値みたいなものを、今後の現場で出せないかなと考えています」

大河の出演は、「風林火山」、「いだてん～東京オリムピック噺～」に続き3作目。「言葉としては、やっぱり素晴らしい体験をさせていただいたということなんですが、この経験がどんなものかは10年後くらいに感じることなのかな」（油原聡子）