「入院を決断しなかったら家で呼吸が止まっていた」 36歳俳優がギラン・バレー症候群に 突然の発症なぜ? 医師に聞く原因と治療法
原因として、通常は風邪や下痢、細菌の感染症(カンピロバクター食中毒など)、新型コロナ感染、予防接種といった「先行感染」から始まる。先行感染に対し、体内では細菌やウイルスを攻撃する抗体ができるが、一部の抗体が誤って自身の末梢神経への攻撃を始めてしまう。その結果、筋力低下や手足のしびれにつながるという。これに三澤氏は、「カンピロバクター食中毒が1000人起きても、ギラン・バレーを発症するのは1人とされる。遺伝的な背景もあるのではと言われている」と補足した。 通常であれば「4週間ほどの間にピークを迎えて、良くなってくる」というが、小堀さんに先行感染はあったのか。「風邪かはわからないが、だるさや目ヤニが出る感覚があった。ただ、仕事に支障が出るほどではなかった」と、気にかけなかった。 発症する可能性は「0歳から100歳まで全年齢層にある」と三澤氏。「0歳の赤ちゃんが『バタバタしない』と母親が小児科に連れてきたケースもある」。また、「コロナ禍ではマスクをしている人が多く、ギラン・バレー症候群も減った」ということだ。
■「治療できる病気」 一方で症状に個人差「重症だと回復しにくくなる」
初期段階では、まず神経の通りを電気で調べる「神経伝導検査」を行うという。三澤氏は、「抗体検査は結果が出るのに時間がかかる。急性期は抗体の結果を見ずに、免疫グロブリン療法や、透析のような血漿浄化療法などの治療に入る」と説明。 小堀さんは免疫グロブリン療法を2度受けたという。「2週間経って指が動き出してから、少しずつ体が動くようになった。ICUでは幻覚や幻聴もあったが、意識がはっきりすると、『治るのか』と不安で寝られなかった」。 細菌・ウイルス感染自体は防ぐことが困難なため、ギラン・バレーの発症リスクを減らすことはできるものの、具体的な予防方法はない。その上で、三澤氏は重症化を防ぐ必要性を語る。「重症になると、神経に傷が残り回復しにくくなるので、ピーク時に重症化させないよう治療を行う。ただ後遺症が残る人もいるため、新たな治療の開発が求められている。神経をいかに傷つけないかが重要だ」。