「白米たくさん食べろ…球児は苦痛」「日曜休みで顧問たちが元気に」“高校野球の当たり前”を疑って甲子園…公立校のトレーニング改革全事実
2024年夏の甲子園に出場した掛川西高校部。トレーニングや選手それぞれの接し方など特徴的なプロセスで強くなろうとしている。大石卓哉監督(44歳)に舞台裏を聞いた。〈NumberWebノンフィクション/全3回の第2回〉 【貴重写真】大谷17歳、超細いのに甲子園で衝撃の特大HR、ぷっくり捕手な村上17歳。ガリガリな柳田、ヤンチャそうな学ラン姿の張本、実は投手だった王さん…名選手140人超の高校時代を見る 今夏、26年ぶりとなる夏の甲子園出場を果たした静岡県立掛川西高校の野球部。聖地で私立校相手に1勝を挙げるなど、大社高校などとともに公立校躍進の象徴となったが、2018年から同校を率いる大石卓哉監督は、試行錯誤を繰り返してきた。
目を吊り上げて食べろ、食べろと言って
例えば、食事面である。 選手たちの体重を増やすため、白米を食べさせるノルマを課した。そして練習前に毎日、選手の体重をチェックしていた。 「たくさん食べられない選手には食事が苦痛になっていました。目を吊り上げて食べろ、食べろと言って苦しめてしまいました」 大石監督は当時をこう反省している。 実際、体重が増えていないことを指揮官に気付かれないよう、体重測定前に水をがぶ飲みする選手やポケットにおにぎりを入れていた選手もいたからだ。その事実を卒業生から知らされた大石監督は、すぐに考えを改めた。 「食事を楽しみながら、体を大きくするにはどうすれば良いのか考えました。栄養士さんにも話を聞いて、正しい知識を身に付けて選手と接するように心掛けました」 身になる食事を取るためには心と体を良い状態に保つ必要があると知った大石監督は、練習メニューを変更した。練習の最後は全員で雑談しながらストレッチ。心も体も緊張状態から解放した。 大石監督は、こう話す。 「今までは問題点を指摘する厳しいミーティングで1日を締めていました。それでは選手たちの食欲は湧かないはずです。交感神経が働き過ぎて、食べ物の吸収も悪くなります。ほっこりとリラックスした雰囲気で練習を終えて、お腹が空いたから家に帰ろうという雰囲気をつくる意識に変えました」 また選手間やスタッフのコミュニケーションを円滑にするために、企業で使われる「slack」も導入。栄養面や試合・練習の振り返りも、可視化できるようにした。 現在、大石監督の目の前で選手が体重計に乗ることはない。健康状態を正しく把握する「InBody」の数値を週1回計測して、各自で推移を把握している。数値はチームをサポートしている管理栄養士と共有できるため、選手は質問や相談できる仕組みになっている。
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