「白米たくさん食べろ…球児は苦痛」「日曜休みで顧問たちが元気に」“高校野球の当たり前”を疑って甲子園…公立校のトレーニング改革全事実
グラウンドを長く使えるはずの火曜日を休みに
長すぎた秋は空虚な時間ではなかった。掛川西はチームを変革するチャンスに変えた。それは「休日」の設定にも表れている。 火曜日の放課後、グラウンドに威勢の良い声は響いていない。制服姿の野球部員は学校の校門を出て自宅へ向かう。掛川西は今春から、毎週火曜日をオフにしているのだ。 授業のコマ数が少ない火曜日は他の平日よりも長く練習できる。これまでは一般的な野球部と同じように、掛川西も月曜日がオフだった。ところが、今は月曜日に週末の試合で見えた課題を修正し、火曜日を休日にしている。 チームを率いる大石監督は長く練習できる火曜日を「あえて」休みにしたという。それはなぜか。 「選手が自由に使える時間を増やす目的です。体のコンディションを整えたり、勉強したり、日々の練習や試合を振り返ったり、選手たちは色んな使い方をしているようです。それから、美容院にも行きやすくなったみたいですね」 掛川西は2年ほど前から髪形を自由にしている。地元の美容院は月曜定休のケースが多く、火曜日がオフになったことで行きつけの店でリラックスする選手もいるという。大石監督は「地元の人たちと交流するのは有意義な時間だと思っているので、髪型を自由にして良かったと感じています」と笑顔を見せる。
オフ期間、あえて「日曜を休日」にしたワケ
休日の設定は大石監督が熟慮していたテーマの1つだった。 昨年の秋季大会で初戦敗退して迎えたシーズンオフ。常識を覆す挑戦に乗り出した。12月から2月までは、日曜日を休日にしたのだ。 静岡県は雪が降らず温暖なため、冬場もグラウンドで体を動かせる。平日よりも圧倒的に練習時間を確保できる土日は、どの監督もチームを強化するチャンスと捉えている。大石監督も同じ考えを持っていたが、固定観念を捨てた。 「色んな可能性を探ってみて、上手くいかなかったら次の方法を試そうと思っています。髪形も同じですが、選手たちは自由になったからといって、突拍子もない行動を起こすわけではありません。むしろ、自分で考えて判断するようになっています。シーズンオフは日曜日を休みにしたのは、選手に“時間を返す”イメージでした」 そうは言っても、日曜日を休日にする決断に指揮官自身も最初は迷いがあった。当時を振り返る。 「日曜日は自由にグラウンドを使えるし、トレーニングする時間も十分に確保できます。他のチームは、みっちり練習しているわけですから、不安はありましたね。選手たちも日曜に休めるうれしさを感じながら、休んでいて大丈夫なのか口には出さなくても心配だったと思います」
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