「白米たくさん食べろ…球児は苦痛」「日曜休みで顧問たちが元気に」“高校野球の当たり前”を疑って甲子園…公立校のトレーニング改革全事実
大胆な改革、最初に効果が表れたのは顧問たちだった
ただ、週末を含む1週間のスケジュールを踏まえると、実は合理的な面もあった。 掛川西の土曜日は始動が早い。朝6時45分から練習をスタートし、お昼ご飯を挟んで午後2時頃には終了する。つまり、土曜日の夕方から月曜日の朝まで、1日半が自由時間になるのだ。 この大胆な改革で、最初に効果が表れたのは、実は顧問たちだった。大石監督はこう振り返る。 「監督の自分と違って、他の顧問の先生方は私の考えや予定に振り回される部分があります。顧問は全員、家庭を持っています。日曜日を休日にしたことでご家族と過ごす時間を取れて元気が回復し、良い顔で月曜日に学校へ来るようになりました。平日に無理なお願いをしやすくなりましたね(笑)」
全国の強豪校にも劣らないフィジカル数値に
さらに、選手たちの表情や動きにも変化が生まれた。 シーズンオフの期間は木曜日の練習を軽くしていたため、「月火水の3日間」と「金土の2日間」で力を出し切る意識が浸透していった。特に、土曜日の動きは日曜日を見据えて練習していた頃と比べて見違えるほど良くなったという。 量より質の方針は数字にも表れた。 フィジカルの数値がチーム史上最高を記録したのだ。掛川西では毎年、選手の入学時から筋力、柔軟性、瞬発力などを年に3回測定している。今夏に甲子園に出場したチームは選手全員の平均値が、大石監督が就任した2018年以降で最も伸びた。 この数値は全国の強豪校でも測定されており、平均値がランキングになっている。全国1位は埼玉県の浦和学院。掛川西は県内でトップ、全国でも4位だった。客観的な数字は選手が自信を持つ1つの根拠になったと大石監督は実感している。 「私たちのチームは秋も春も結果を出せませんでした。周りの人たちは夏も勝てないと思っていたはずです。でも、選手たちは甲子園で戦えるだけのベースができていると考えていました。その自信が相手チームの名前や体格にひるまず、劣勢でも自分たちを見失わない戦い方につながったと感じています」
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