<ふれる。>秩父から東京、思春期から青年期へ 青春3部作を経てたどり着いたもの 脚本・岡田麿里に聞く
思春期に決着をつけられてきたからこそ「このくらいの年代を書くのがすごく楽しかったです。私も友達と共同生活をしていたことがあったので、当時の気持ちや共同生活の難しさを思い出したりもして」と語る。
「ふれる。」の舞台となる東京・高田馬場は、岡田さんが秩父から上京し、一時期暮らしていた土地でもある。
「最初は、東京の中でも別の候補があったんですけど、長井監督が全然ピンと来てくれなくて。やはり、長井監督は私の出身地とかがいいんだろうなと思ったんです(笑)。そして多分、高田馬場は好きだろうなと。長年一緒にやってきたので、趣味嗜好がなんとなく分かるんですよね。それで『ちょっと見に行きますか?』と行ってみたら、高田馬場に決まりました。とはいえ、それでだいぶ書きやすくなりましたね。高田馬場は学生さんも多いし、上京してきたばかりの学生さんの空気もあって、見ていて物語が浮かぶ場所だなと思いましたね」
◇永瀬廉、坂東龍汰、前田拳太郎の“声の力”
今作では、小野田秋役の永瀬廉さん、祖父江諒役の坂東龍汰さん、井ノ原優太役の前田拳太郎さんと、豪華俳優陣が3人の主人公を演じることも話題になっている。岡田さんは、「声からいただいた力がすごく大きい」と語る。
「オーディションテープを聞かせていただいて、その中から選ばせていただいたんですけども、本当にお三方ともすごく良くて。キャラクターの絵、脚本、コンテも上がってきていて、その中で脳内で勝手に再生される声はあったんですよ。こんな感じの声かなというのが。でもお三方は良い意味で、想定の範囲内をちょっと飛び越していたんです」
永瀬さん演じる秋は、口下手で幼い頃から手が先に出てしまう不器用なタイプで「秋はすごく難しいキャラクターで、なかなか主人公になりにくいというか、真実から目を背けたがっている子だと思うんです。純粋な優しさがあるんだけれど、その優しさが結構自分勝手というか、自分を守るためにも使われている。そこがすごく難しくなってくるんですけど、永瀬さんの声がすごく繊細で、柔らかい涼しさがあって。あの声が入ると、秋の少年ぽさというか、ほうっておけない感じがすごく出てくる」と感じたという。