<ふれる。>秩父から東京、思春期から青年期へ 青春3部作を経てたどり着いたもの 脚本・岡田麿里に聞く
「ふれる。」の3人の主人公は、幼少期に不思議な生き物“ふれる”と出会い、互いの心の声が聞こえるという“ふれる”の力で友達になった。岡田さんは「本来だったら友達になれなかったのかもしれない子たちが友達になる、というところが自分の中で大きいテーマの一つでした」と語る。
「思い返すと、『あの花』で私が書きたかったことの一つに、置かれたポジションが変わると友達じゃいられなくなるというものがありました。本来すごく仲がいいはずでも、見た目や趣味嗜好の変化によって昔のようにはいられなくなる。そこを乗り越えていく話にしたいなと。ただ、今回の『ふれる。』はちょっと違っていて、本来だったら友達になれなかったのかもしれない子たちが友達になる。そもそも、どうしたら友達でいられるのだろう? 本質を見ないからこそ友達でいられるのか? それって本当に友達なのか? でも“本当の友達”って何なの?と。作中で『”ふれる”がいなかったら友達になっていなかったかもしれない』というせりふもありますが、そもそも友達になるか、ならないかは奇跡的でもあるような気がして。そういうところをどう描いていこう、と考えていきました」
◇思春期に決着をつけられたからこそ描けたもの
コミュニケーション、友達、状況による関係性の変化。それらを青年3人を主人公にして描く。これまで“思春期”をテーマにした作品を手掛けることが多かった岡田さんは、青年3人が主人公の物語を描くことは楽しかったという。
「自分としては思春期にこだわりはないんですけど、オーダーとしていただくことが多くて、それは何でかな?と思った時に、もしかして私自身、いまだに思春期を消化しきれてないのかなと。あの時代に置いてきてしまって執着していることが多くて、だからこそ強く描きたがるのかもしれないと思ったんです。そういう意味で、思春期を描いていく中で、自分の中で決着をつけようとしてきた部分もあるかもと思って」