宮野真守は“二面性”で魅せる声優だ 『忘却バッテリー』『キン肉マン』などでの“振り幅”
クールな野球の名捕手から、アホで脳天気な男子高校生まで、声優の宮野真守がほかの作品にはない“振り幅”を持った声を聞かせてくれたTVアニメ『忘却バッテリー』の第2期制作が決定した。 【写真】要圭、清峰葉流火ら小手指高校野球部のメンバーたち 第2期制作決定映像からも感じられるように、宮野の声の変化によって大きく左右される野球の試合ぶりが今から楽しみだ。みかわ絵子の漫画を原作にした『忘却バッテリー』とはどのような作品なのか。宮野真守はそこでどれだけの“凄さ”を発揮してきたのか――。 ●TVアニメ『忘却バッテリー』第1話の衝撃 「悪夢のようなバッテリーだ」。2024年4月に始まったTVアニメ『忘却バッテリー』の第1話で、そう対戦相手に評されていたのが、中学の硬式野球で広く名を知られていた投手の清峰葉流火と捕手の要圭。寡黙だが投げればとてつもない速球を放つ葉流火を、圭は冷静なリードで落ち着かせて勝利を重ねていた。 圭を演じる宮野真守の声も冷静沈着そのものだった。聞けば安心と確信が得られる知性的な雰囲気を持った声だったが、それが次の瞬間に一変する。病院のベッドに横たわり、頭に包帯を巻いた圭がバナナを食べている病室に、お見舞いの果物かごを持って入ってきた葉流火に圭はこう言い放つ。「きみ、誰だっけ?」。 クールさのかけらも感じられない幼稚なしゃべり方をしていたのは、圭のそっくりさんではなく圭本人。そして印象的なギターのリフから始まるMrs. GREEN APPLEによる2024年のヒット曲「ライラック」を経て、本編に突入したところでさらに驚きの圭の豹変ぶりであり、宮野の演技のカメレオンのような変幻ぶりを目の当たりにすることになる。 ●コミカルだが芯には“意思の強さ”も感じさせる巧みな演技力 中学時代に葉流火と圭のバッテリーにコテンパンにされて、野球を諦め野球部の無い都立小手指高校に進学した山田太郎が校門で目にしたのが、葉流火と圭にそっくりな2人組。いやいやいや。その2人なら推薦で野球部の名門校に進んでいるはずだと思った山田を見て、なぜか駆け寄ってきた圭のそっくりさんは、友達になった証にと一発芸を披露する。 「パイ毛ぇええええええええええええええ」 違うだろう。絶対に要圭ではないだろう。そう思ったら本当に要圭で、どうやら記憶喪失で智将だった時に記憶も経験もまったく心身に残っておらず、野球なんて無理だということで野球部のない都立に進んできたようだった。実際、宮野が演じる圭はギャグを見せるわ女子に逃げられたといって嘆くわと、カッコ悪い上に頭も悪そう。同世代の球児たちを畏敬させた智将ぶりはまるで見られない。 そこに、宮野の演技力の幅広さがあるのは当然だが、それだけではないところが圭というキャラクターを演じる宮野からは感じられる。振り幅といえば、『忘却バッテリー』の第1期終了と入れ替わるように、2024年7月から始まった『キン肉マン 完璧超人始祖編』で主人公のキン肉マンを演じた宮野は、コミカルさと強靱さを併せ持ったキン肉マンの声を聞かせてくれた。普段はコミカルだが芯には意思の強さがあるといった地続き感がそこにはあった。 2022年から2024年にかけて放送されたTVアニメ『うる星やつら』で演じた面堂終太郎も、大金持ちのお坊ちゃんですぐにカッコを付けようとする一方で、暗くて狭いところに入ると泣き叫び、諸星あたるからちょっかいをかけられ、怒声をあげて対抗する豹変ぶりが特徴だった。その振り幅も相当だったが、キン肉マンとは逆の意味で、イケメンでありながら直情的な面堂というキャラを、地続き感の中に演じてみせてくれたところがある。