トランプ次期米大統領、計算された政権スタートダッシュ 人事では不安も
【ワシントン=坂本一之】トランプ次期米大統領は来年1月20日の就任初日から、移民・国境管理の強化など選挙公約の実行に着手し、スタートダッシュを図る考えだ。支持者の意をくんだ優先政策を実現する体制を敷くなど、計算を尽くした政権運営で世論の支持を得て求心力の維持、拡大を狙う。ただ、一部の閣僚人事を巡っては党内から不安視する声も出ている。 トランプ氏は11月30日、自身の交流サイトで移民・国境管理や貿易、エネルギーなど「極めて重要な問題」に就任前から取り組むと訴えた。大統領選で国境強化を掲げたトランプ氏は25日、不法移民や医療用麻薬の流入問題でカナダとメキシコからの全ての輸入品に25%の関税を課すと表明。就任初日に25%の関税を含め、複数の大統領令に署名する方針を示した。 29日には南部フロリダ州の私邸でカナダのトルドー首相と会談し、不法移民や医療用麻薬、貿易赤字など米有権者の懸念や不満が強い問題を協議。「生産的な会談だった」と振り返り、自身のスローガン「米国第一」の政策に取り組む姿勢をアピールした。 就任前に外国要人と原則面会しないとして石破茂首相らとの会談を見送った一方で、国内支持を得られる課題では積極的な対応だ。 トランプ氏陣営は大統領選後、支持者らにどのような政策を優先すべきかアンケートを実施。こうしたデータを元に政権のスタートダッシュを図る政策を取捨選択しているとみられる。 政権人事では、忠誠心があり政策を支持する人を重用。第1次政権で相次いだ辞任や更迭を回避し、素早い政策実行を進める体制を敷いている。 トランプ氏が成果を急ぐのは、共和党内で自身の求心力が任期の最後まで維持できるか不透明だからだ。2期目のトランプ氏は原則的に次の大統領選に出馬できず、人気が落ち込めば共和党が次のリーダーを模索し始めることになる。 さらに、政権への審判となる2026年の中間選挙で議会の多数派を共和党が失えば、政権運営が厳しくなる。共和党関係者は「下院で民主党が多数派となれば、トランプ氏への弾劾訴追に動く」と警戒する。 こうした事態を防ぐため政策を次々と実現し、支持率を高めて求心力を維持する狙いがある。