「客寄せパンダでもいい」新庄剛志、プロ復帰は“70%”の真意
“客寄せパンダ”でもいい
もともとは実力限定、戦力としての現役復帰にこだわっており、自身の復帰が球団の集客のためだけに使われることには抵抗もあった。だが、コロナショックで考えが変わった。先の見えないパンデミックとの戦いの中で、世界中の人々が苦しんでいる。どんな形でもNPBから関心を得られさえすれば、あとは自分の努力次第でなんとかなると考えている。阪神時代には大震災を、メッツ時代には米同時多発テロ事件を経験した新庄には、自身の存在感とチャレンジ精神で傷ついた人々の心に明かりを灯したいという思いがある。プロ野球開幕を直前に控え、「自らが目指す復帰の糸口はいわゆる“客寄せパンダ”でも構わない」とさえ言い切る。 「トライしたくてもトライできない世の中になっているじゃないですか。そんな中で、みんなに“ちょっと俺も挑戦してみようかな”って思われたらめちゃくちゃ嬉しいですね。もう何万人ものみんなからメールで“僕も挑戦します”っていうコメントは来ているから、それも超嬉しい」 「みんなも前向きに、1日何時間でも、コロナが明けた時にプラスになる勉強やらをやって欲しいですね。24時間中、睡眠8時間、仕事8時間、自由時間8時間のうち、自由時間の1時間を何かに使えばいい。例えば英語を学ぶやら、スポーツを何かするやら……」
もちろんそれらは言葉で言うほど簡単なことではないのだろう。現在に生きる私たちが、後々まで語り継がれる時間を過ごしていることはもう間違いない。新庄が例に出した震災やアメリカのテロ事件は衝撃的ではあったが、コロナ禍の今ではあの時よりも長期戦を強いられているだけに、ボディブローのようにじわじわと人々が弱らされている感がある。これまで多くの人々の心のよりどころであり続けてきたスポーツが世界中で軒並みストップしたことも、心身の両面で人々に大きなダメージを与えているようにも思える。 ただ、だからこそ、という気持ちが新庄の中にはあるのだろう。世界はもうしばらく元には戻らないかもしれない。そんな現在でも、いや、そんな現在だからこそ、可能な限り前向きに、新しい物事に挑んでいくことに大きな意味がある。 「いつ死ぬかわからないでしょ。それまでに思いっきり自分のやりたいことをやりたい。それが目標。後悔はせずに、いつ死んでもいいですよっていう気持ちのモチベーションを毎日持っていく。今は苦しいけどね。今を乗り越えたら楽しいことがある。でも今がないと、その先はないから。そういう気持ちですね」 これまでも様々な形で人々を驚かせてきた新庄は、開拓者であり、チャレンジャー。いまだに莫大な人気と影響力を誇る48歳の風雲児が立ち止まることはない。後を追いかけてくれるフォロワーたちの先陣を切るように、パンデミックの中でも明るく前に進み続ける。