頭金ゼロの場合に想定されるデメリット~住宅ローンの頭金について銀行員が解説
住宅を手に入れるとき、そして住宅ローンを考えるとき、必ずと言っていいほど登場するのが「頭金」というキーワードです。知っているようで意外と説明しにくい頭金について、銀行員がわかりやすく解説していきます。(金融ライター・加藤隆二、現役銀行員) 変動金利はどうなる? 大手シンクタンクの短期金利予想を、一挙公開 目次頭金とは?~頭金の意味と平均準備割合なぜ頭金が必要になるのか?頭金ゼロの場合に想定されるデメリットまとめ
住宅ローンの頭金とは?~頭金の意味と平均準備割合
土地や建物は大きな買い物で、金額も大きなものになります。そのため一括で支払うケースは少なく、多くが何回かに分割して支払います。このように不動産のお金を分けて支払うとき、最初に支払う代金が頭金です。 図表1 住宅購入に必要となる費用 とはいえ、最近では物件そのものの購入とは別に必要となる諸費用も含めた自己資金のことを頭金と呼称するように変わってきています。 頭金の割合 住宅ローンを利用する人は、自宅購入者全体の8割近くです。特に若年層の住居購入はローンが主流となっています。 そして、ローンを借りたときの頭金については、全世代平均では約48%が「頭金ゼロか1割程度」で、30歳代の「頭金ゼロか1割程度」の比率は68.6%。3分の2がほとんど頭金なしで住宅を購入しています。 図表2 住宅購入時の頭金比率(物件価額に対する比率)
なぜ頭金が必要になるのか?
頭金が必要になる理由は主に2つあります。 理由1.住宅購入資金は、すべてが住宅ローン対象とはならないから 現在、住宅ローンの資金使途はかなり幅広くなっています。たとえば私が銀行に入社した30年前の頃は、保証会社の保証料や手数料は自己資金で払うことが当たり前でしたし、新築時の外構費用(庭やエクステリアなど)も住宅ローンで借りることができないものでした。ところが現在では、ほぼすべての諸費用が住宅ローンで借り入れ可能となっています。 以下は、みずほ銀行の資金使途の抜粋です。 資金使途 (1)本人居住用の土地・住宅の購入、住宅の新築・増築・改築、底地の買取資金 * 賃貸の目的にはご利用できません。 (2)火災保険料、保証会社手数料・保証料、ローン取扱手数料、電子契約手数料、固定金利手数料、仲介手数料、担保関連費用、印紙税、引越費用、修繕積立金、リフォーム費用、付帯工事費用、管理準備金、水道加入金 【参考】住宅ローンで借入できる諸費用(資金使途)みずほ住宅ローン商品概要 しかしながら、住宅ローンの対象となる範囲は銀行によって異なります。ローンの対象となっていても、ローンを借りてからかなり時間がかかるもの(例・仕事や子どもの学校などの都合で入居まで半年以上必要になる場合などの引っ越し費用)は、ローンで借り入れできない場合もあります。また土地や分譲マンション購入時の手付金を払わなければいけないケースでは、住宅ローンを借りる前なので自己資金での支払いとなることが多いです。 こうした理由から、一般に「住宅購入には2割から3割程度の自己資金が必要」と言われてきました。ただ上記の通り、今では住宅ローンが柔軟に対応できるものも増えており、銀行員としてローン審査をする立場からは、自己資金は最低でも1割程度必要と考えています。 理由2.住宅ローン審査では減額回答されることもあるから 例えば3,000万円の住宅ローン申し込みに対し、2,500万円までなら融資可能といった場合もあり、これを「減額回答」などと呼んでいます。住宅ローン審査で減額回答される原因は人それぞれ、さまざまですが、主な理由は以下のとおりです。 <住宅ローンが減額回答される原因> • 返済比率 顧客の収入が少ないと返済比率が銀行の審査基準を超えてしまい、申込額を貸せない • 資金使途 申し込みの資金使途で住宅ローンとして認められないものがある 一方、最近では銀行の住宅ローン審査も変化して、かなり優しくなってきていると私は感じています。例えば、以前なら「自己資金がない人は、お金に余裕がないから」との理由で審査ではマイナス要素となっていました。 しかし、住宅ローン利用率が高まり、さらに頭金がゼロまたは少しだけのケースが一般化している時代の流れで、以前なら審査落ちしていたフルローンやオーバーローン(*)でも、現在は多くの銀行でマイナスの影響なく審査が進むようになっています。 (*)フルローン:一戸建てなら本体価格を全額(フル)借りること 諸費用は自己資金 (*)オーバーローン:諸費用込み、つまり本体価格を超えて(オーバー)借りること