【サッカー日本代表 板倉 滉の「やるよ、俺は!」】第23回 崖っぷちのピンチをチャンスに変えるには?
自分の思うようにいかない苦悩の日々。そんなときにどのようにして抜け出すためのきっかけをつかめばいいのか。昨季、クラブや代表で長くもがき続けた板倉が、今シーズンを好調な出だしにするために意識した"気の持ち方"を語る。 ■昨季はまさに泥沼状態。這い上がるきっかけは...... 生きていく中で、どうあがいてもうまくいかないときがある。空回りの連続、ピンチがすぐそばに......。 僕らサッカー選手もそんな状況に直面することはしょっちゅう。そんなときどうすればいいのか。僕なりの考えを話せればと思う。 8月18日(以下、日本時間)、カップ戦のDFBポカール1回戦で今シーズンは幕を開けた。相手はブンデスリーガ3部のエルツゲビルゲ・アウエで、アウェーゲーム。 前半8分に先制されてヒヤリとしたが、結果は3-1で勝利。続く24日は昨年の覇者であるレバークーゼンをホームに迎えてのリーグ開幕戦。 この試合、敗れはしたが(2-3)、それでも去年の第2節に0-3で完敗したのに比べたら、一定の手応えをつかめた。 今でこそ言えることだが、昨シーズンは、正直きつかった。昨年10月下旬の左足首の手術から復帰後、今年1月のアジア杯へ。イラン戦での敗北を経て、クラブでの試合復帰は2月10日の第21節・ダルムシュタット戦。公式戦出場は16試合ぶりだった。 シーズン後半戦は僕が出場停止で出られなかった第23節のボーフム戦(5-2)の勝利以外、とにかく勝ち点が遠くに感じられた。引き分け、あるいは負け。 チームとしてはいろいろ試すけれども、結果がついてこない。チーム内で鼓舞する声も上がらず、だんだんと残留争いに巻き込まれ、ドレッシングルームは重々しい空気に包まれていた。 第26節のハイデンハイム戦では、本職のCBではなく、ボランチとして後半26分から途中起用されることになる。なかなか感覚を取り戻せずに四苦八苦。この頃が、心身共に一番くじけそうだった。 まさにピンチともいうべき状況からいかにして立て直したのか。きっかけとなったのは、第28節・ボルフスブルク戦だった。 4試合勝ちなしのまま敵地へ。ボランチでの先発出場だった。前半7分に先制されたものの、後半7分に25mの位置から右足を振り抜いて同点弾を決めることができた。 とにかくチームが残留するために結果が欲しい、その一念で蹴ったシュートだった。結果は3-1の逆転勝利。サッカーとはメンタルが左右するスポーツ。最後は気の持ち方である。そのことを再認識した一戦だった。 その後、チームは再び勝ち点3を取ることができず、最終節まで敗北もしくは引き分けが続き、僕自身いいパフォーマンスができたともいえなかったが......。 それでも、チームのために何ができるのか、献身的な意識を忘れず、ほんの少しでもいいから前に一歩踏み出す勇気が大切だと思う。 それと、うまくいかないときは無理してうまくやろうとしないほうがいい。 例えば、普段なら確実にドリブルで抜けるのに抜けない選手がいた場合、その代わりにハードワークがしっかりできるのか、あるいは守備面でしっかり走れるのかが実は一番重要。 そういうところを怠り出すと、チーム全体としても勝てなくなるような気がする。実直さがカギだ。