留学生は単なる「助っ人」なのか? 高校駅伝のルール改正が話題に…現王者・佐久長聖高監督が語る“功罪”「競う場が減るのはマイナスだが…」
駅伝界でたびたび議題に挙がる「留学生問題」。今年は高校駅伝で大きなルール改正が行われる。これまでも様々な試行錯誤が行われてきた駅伝と留学生の歴史だが、現場で戦う指導者たちはその変化をどう感じているのか。昨年の全国高校駅伝チャンピオンである佐久長聖高(長野)の高見澤勝監督に話を聞いた。<前後編の前編/後編を読む> 【貴重写真】「えっ!今って坊主じゃないの…?」強豪・佐久長聖高の“長髪ランナー”たち…「まるで修行僧」大迫傑など歴代OBたちの坊主頭&都大路で爆走するライバル留学生たちの走りも見る 昨年末、高校駅伝界で外国人留学生に関する大きなルール改正の発表があった。 1990年代前半に始まった高校駅伝での留学生ランナーの起用をめぐっては、これまでもたびたび議論がさわれてきた。結果として1995年に「出場できるのは各校1人まで」、2008年には「最長区間(※男子は1区10km、女子は1区6km)での起用禁止」など、徐々に制限が設けられてきた。 2024年大会からは、それに加えて「男女とも留学生の起用は最短区間に限る」というルールが適用される。全国高校駅伝の最短区間は男女とも3km。これまでは男子では8km区間、女子では5km区間と2番目に長い区間を担うことが多かっただけに、区間距離が減ることでレースへの影響力が減ることが予想される。
高校駅伝界の「王者」はルール改正をどう見るか
「これまでも留学生の区間制限の話は何度も議題には上がっていたので、突然という感じはありませんでした。ただ、日本人だけのチームで優勝した大会の直後に発表されましたから、その意味でも『このタイミングなのか。ちょっと驚いたな』というのが正直な感想ではありました」 そう語るのは、昨年の男子の都大路を2時間1分0秒の大会新記録で制した佐久長聖高校(長野)駅伝部の高見澤勝監督だ。佐久長聖はこれまで留学生の起用経験はなく、日本人ランナーのみで3度の全国優勝を果たしている。 「大前提としてウチの場合はチームに留学生もいないし、駅伝では相手に留学生がいるかどうかもあまり気にしていないんです。全国で勝つためにどういうレースをするか。それを考える上で、相手に留学生がいればいるなりの対策を考えますし、いなければそれに応じた配置を考える。なので、今回のルール変更に関しても心情的には大きな変化はないんです」 力のある留学生ランナーを相手にしても、個人では勝てないまでもチームでは十分戦い得る。それはこれまで日本人だけで3度の全国制覇を果たした佐久長聖ゆえの矜持でもあり、駅伝という競技の面白さでもある。 その上で、高見澤監督は日本人選手と比べても「飛び抜けた力がある」留学生の起用区間規制に関しての良し悪しをこう分析する。 「現実的に考えると、今回の規制を受けて日本人のトップ選手と留学生が駅伝で肩を並べて走る機会はほぼ、失われます。陸連側は『日本人ランナーのスピード強化を期待したい』ということも言っていましたが、実際問題としてエース格のランナーがチームの6番手、7番手の選手が走る3km区間に回ることはほぼあり得ません。ですので、その意味ではチームのトップランナーにとって残念だなと思う部分はあります。 ウチで言えば一昨年の吉岡大翔(現順大、5000mの高校記録保持者)や昨年の永原颯磨(現順大、3000mSCの高校記録保持者)といったランナーは、同じ区間を走る可能性の高い留学生を相手に『なんとか勝負しよう』という目標をもっていました。そういった機会が失われるのは、正直もったいないとは思います」 その一方で、上記の選手のような“超高校級”以外の多くのランナーにとっては精神的なプラス面もあると考えているという。 「吉岡や永原のように『留学生と切磋琢磨したい。勝負をしたい』と思えるランナーというのは高校生の中では本当に一握りと言っていいと思います。他の一般的なランナーにとっては、たとえ全国大会に出るような選手であっても、留学生というのはまさに『雲の上の存在』なんです。 例えば駅伝で留学生と同じ区間になったほとんどのランナーは『どうやったって勝てないよ』という絶望感の中で走っていた部分は大いにある。そういった意味では、今回のルール改正は多くの選手のモチベーションの維持という部分ではメリットもあると思います。他にも留学生を擁するチームでは、これまで留学生が長距離区間を担ってくれたおかげでつなぎ区間に回っていたランナーたちの責任感や自覚は増すでしょうから、そこの意識の向上は考えられますね」
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