留学生は単なる「助っ人」なのか? 高校駅伝のルール改正が話題に…現王者・佐久長聖高監督が語る“功罪”「競う場が減るのはマイナスだが…」
区間制限は「留学生の意欲を削ぐ」のか?
また、今回のルール改正がSNSやメディア等で取り上げられる際に語られた懸念点のひとつとして、「身一つで異国の地に来て頑張っている留学生の意欲を削ぐのではないか」という声も聞かれた。 自身も山梨学大時代にはチームメイトに留学生ランナーがおり、その生活を間近で見ていた高見澤監督はこう語る。 「大学時代、留学生ランナーと一緒に生活してきた中で、私自身が異国の様々な文化を知ったり、国を出て言葉の壁や色んな苦労を乗り越えて努力している外国人選手を見てきています。我々が海外に行って、同じことをやってみろといったらなかなかできることではない。そういう意味で、競技力だけでなく『留学生はすごい』というのは身をもって感じることができました」
外国人留学生は単なる「助っ人」なのか
ただ、その一方で近年はこんな問題も感じているのだという。 「そうやって一緒に学校生活や部活動の時間を過ごすことで、異国の文化に触れ、競技力も向上するということが留学生を受け入れる意義のはずなんです。ところが、その競技力の高さがかえって仇となって、ある種、駅伝のための『助っ人』としてだけ呼んでいるチームもないわけではないんです。 例えば日本に連れて来ても、夏合宿の間は実業団に預けてしまって、実際の生活でともに時間を過ごすことがとても少ないようなケースも耳にします。仕事として走るプロランナーならともかく、あくまで教育機関である高校の中でそういった状況があるのは決して健全とは言えない。そう考えると、留学生の存在があまりにレースの結果に影響を与えすぎてしまうのは、本来の教育の意味を考えても双方にとって課題があるとも思います」 裏を返せば、たとえ3kmという短い区間に制限されたとしても、健全な教育システムが確立されてさえいれば、上記のような「留学生の意義」という意味では大きな問題がないとも言えるのだろう。 「実際に大学や実業団の駅伝を考えると、留学生が起用可能なのは箱根駅伝では10区間のうち1区間だけですし、ニューイヤー駅伝でも全体100kmのうち7.8kmだけ。どちらも全距離の10パーセント以下の比率です。そう考えるとこれまでの高校駅伝では留学生の走る区間の比率が20パーセント程度もありましたから、ようやく他のカテゴリーに追いついたというのが正確なところなのかもしれません」 また、日々のトレーニングにおいても留学生がいるということは、それだけで日本人選手にとっては大きな目標にもなる。留学生の存在は実際のレースだけではないプラスを生むこともあり、「一概に距離の規制が留学生のモチベーション低下やチームの留学生起用が減ることにはつながらないのではないか」と高見澤監督は考えている。 では、実際にこのルール改正は高校駅伝、ひいては高校長距離界にどんな変化をもたらすと考えられるのだろうか? <後編へつづく>
(「オリンピックPRESS」山崎ダイ = 文)
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