何十万人の「避難勧告」どう受け止めたらいい?
梅雨明けが各地から伝えられるようになりましたが、台風やゲリラ豪雨のシーズンはまだ続きます。7月上旬の台風8号は沖縄や長野を中心に少なからぬ被害をもたらしました。ここ数年、台風や大雨の規模によっては何十万人もの住民を対象にした避難勧告が出されます。しかし、都市全域に避難勧告が出されても「どこに逃げたらいいの?」と戸惑う人も少なくないようです。市民はどう受け止めたらいいのでしょうか。 ■「勧告」は「指示」より安心なのか 「避難勧告」「避難指示」はいずれも災害対策基本法第60条に基づいて市町村長が発します。被災の恐れのある地域の住民に対して「避難のための立ち退きを勧告」し、さらに「急を要すると認めるとき」は「立ち退きを指示することができる」との定義です。 また、高齢者や障害者など、避難に時間がかかる人やその支援者などを対象に呼び掛けるのは「避難準備情報」。法に定められてはいませんが、内閣府が2005年に策定した「避難勧告等の判断・伝達マニュアル作成ガイドライン」に盛り込まれ、自治体ごとに運用されてきました。 つまり「避難準備情報」「勧告」「指示」の順で事態が切迫し、強制力があるということです。では、「指示」に比べて「勧告」の段階ならまだ慌てなくてよいということなのでしょうか。「それは決してありません」と断言するのは「釜石の奇跡」などの実践で知られる防災研究の第一人者である群馬大学大学院の片田敏孝教授。 「台風8号で土石流が発生した長野県南木曽町では、勧告すら出されずに犠牲者が出てしまいました。行政の情報が間に合わないことは頻繁にあります」と指摘した上で、勧告時の避難行動についてはこう述べます。「勧告が出されても、高いところや低いところ、木造の平屋かコンクリートのマンションかなど、1人1人のいる条件は違います。また、水害の場合は『逃げない』方がいい場合もあるのです」。 ■「屋内待避」「垂直避難」も法に 片田教授の言う「逃げない」避難とは「屋外に出ない」こと。「避難」というと、どうしても避難所へ逃げ込むイメージを持ってしまいますが、特に水害では無理に外へ逃げるより、屋内にとどまったり、建物の高い階へ上がったりする方が安全な場合があります。「屋内待避」や「垂直移動」「垂直避難」などと呼ばれるこうした避難のあり方は、これまで明確に位置付けられてきませんでした。