震災1年、「福梅」今年も 氷見・井上菓子舗 液状化被害で店舗損壊
● 職人「春を届けたい」 能登半島地震で大きな被害に見舞われた氷見市栄町の和菓子店「井上菓子舗」で、正月の縁起物の菓子「福梅」の生産が最盛期を迎えた。店舗兼住宅は深刻な液状化被害で損壊したが、幸いにも工場は無事だった。職人は例年通り菓子製造ができる喜びをかみしめ、「世話になった人たちに春を届けたい」と早期復興への願いを込めて作業に精を出している。 【写真】液状化被害の爪痕が残る新道地区 福梅は加賀藩前田家の家紋に由来する伝統の銘菓で、今年は昨年と同じ約4千個の生産を見込む。製造部門マネジャーの林真由美さん(50)は「近年は新型コロナに地震と続いたが、来年こそは良い1年になってほしい」と話した。 県道に面する井上菓子舗は店舗兼住宅が傾き、地面も隆起や沈下で凸凹になった。工場は無事だったが、長引く断水で菓子作りの再開まで約3週間かかった。1月の売り上げは例年の4割に落ち込んだ。 震災前の昨年12月には、米ロサンゼルスの商業施設でのブース出展が決まっていた。念願の米市場への進出を取りやめることも一時検討されたが、5、6月の3日間で無事にデモ販売を行うことができた。「新商品開発のアイデアが浮かぶなど収穫は大きかった」と林さんは振り返る。店は今後インバウンド対応にも力を入れる方針だ。 店舗のある新道町内会では住民の転出が相次ぎ、付近の顧客も離れるなど状況は依然厳しい。全壊判定の店舗の再建をどのように進めるかは、来年3月末となる公費解体申請期限まで、店舗代表の母ら家族でじっくりと話し合う。 「店を続けることで住民が喜んでくれる。自分たちも頑張りたい」と前を向く林さん。福梅作りを進めながら、地域に長く愛されてきた老舗を守る気持ちを新たにしている。