福井県の男性「69年前のお礼、伝えたかった」 背負って通園してくれた「お姉ちゃん」探した結果…
左足に障害のある福井県坂井市春江町の75歳男性が、69年前に自分を背負って幼稚園に連れていってくれた少女を探していることを12月13日付の福井新聞で報じたところ、少女の同級生らから情報が男性に寄せられた。少女は2019年に78歳で亡くなっており、男性は19日夜、同市内の遺族宅を訪れて感謝の思いを伝えた。「直接会ってお礼を言いたかった。残念だけど、遺族に伝えることができてよかった」とすっきりした表情で語った。 男性は市身体障害者福祉協会長の長谷川治男さん。園児だった1955~56年、1人で歩けず両親に背負われて通園していたが、見ず知らずだった当時春江小6年の青木喜美枝さんが代わって送ってくれた。長谷川さんは昨年、父の遺品にあった善行を伝える55年2月の福井新聞記事などで喜美枝さんの存在を知った。 当時のお礼を言いたいという男性の思いを福井新聞で紹介したところ、喜美枝さんの同級生や職場の元同僚らから十数件の情報が寄せられ、消息が分かった。喜美枝さんは福井市に引っ越し、同市内に嫁いで西姓になり、約50年前に坂井市春江町に居を戻していた。 長谷川さんは19日、喜美枝さんの長男の西稔弘さん(56)宅を訪れ、喜美枝さんの善意に感謝を述べた。稔弘さんと、長女の原田美香さん(51)=福井市=は、直接話を聞いたことはなかったが「(母は)7人きょうだいの真ん中で世話好きだった。そのエピソードがあっても不思議でない気がする。そんな人だった」と思いをはせた。「人を喜ばせるのが好き。社交的で友達も多かった」という。 喜美枝さんの生前の写真を見せてもらった長谷川さんは「もし会えたらどんな話をしようかと思っていたけれど」と直接感謝の思いを伝えられず、肩を落とした。同じ坂井市春江町にいたことから、稔弘さんに「どこかですれ違っていたかもしれないですね」と声を掛けられた。24日夜にも訪問し、55年2月の新聞記事と喜美枝さんの善行を絶賛する当時の春江小校長の手紙のコピーを渡した。
福井新聞社