不発弾であわや大惨事!「終わらない戦後処理」…処理数は全国で年1000件超、高額費用を泣く泣く負担する地主も
■ 処理数は2023年度に2348件 第2次世界大戦で米軍は戦略爆撃機など延べ約2万6000機を日本空襲に参加させ、計16万トン・約70万発の爆弾を投下したとされています。 空襲を受けた都市は200以上。「NHKスペシャル 本土空襲全記録」取材班の調査では、空襲による死者は全国で46万人近くに達しています(沖縄戦の犠牲者を除く)。つまり、空襲を受けた都市部ならどこでも不発弾が出てくる恐れがあるのです。 実際、戦後は、途切れることなく各地で不発弾の発見と処理が続いています。 防衛省によると、1972~2022年度に自衛隊が処理した不発弾件数は全国で11万7856件、計4487トンに達しました。しかも年ごとの処理件数は減っていません。 2019年度以降も毎年1000件以上。直近の2023年度は2348件にも達し、計37.5トンが処理されました。沖縄県だけで累計4万件が処理されていますが、近年は沖縄県以外での処理が増えているのが目立ちます。 2024年も鹿児島市(3月)、千葉県柏市(6月など)、那覇空港(10月)、松山沖(12月)などで不発弾が見つかりました。とくに12月15日に名古屋市東区で行われた不発弾処理は大きく報道されたため、記憶の鮮明な人も多いでしょう。 現場はオフィスやマンションが立ち並ぶ街の中心部で、解体作業現場から見つかったのは米軍の250キロ爆弾。起爆装置はその場で外され、作業は約3時間で無事に終了しました。この間、4000人近い付近の住民に避難が呼びかけられ、地下路・路線バスも運休やルート変更が行われました。
■ タワマン付近で発見され大騒動に 不発弾の処理を担うのは自衛隊です。1958年までは通商産業省(現・経済産業省)が所管し、実際には都道府県が処理を担っていましたが、1954年に発足した自衛隊の体制も整ってきたため、任務が移管されました。 現在では、不発弾らしきものが見つかると、自治体や住民から連絡を受けた警察が自衛隊に連絡します。出動するのは主に全国に4つある陸上自衛隊の不発弾処理隊。朝霞(埼玉県朝霞市)、桂(京都市)、目達原(佐賀県吉野ヶ里町)、那覇(沖縄県)の4駐屯地に駐在しています。 このほか、宇都宮市の中央即応連隊爆発装置処理隊が出動することもあります。また、海中や海辺の場合には海上自衛隊が処理に当たります。 陸自の不発弾処理隊は、連絡を受けると速やかに現場に出動し、不発弾の識別や危険度の判定、処理(無害化)を行います。危険性が低い場合は、警察が不発弾を一時的に保管し、後に不発弾処理隊が回収して処理することもあります。 問題なのは、識別調査によって不発弾の危険性が高いと判断された場合です。運搬が可能な場合は回収し、後日処理されますが、起爆装置(信管)を付けたまま持ち運ぶことには大きな危険を伴います。 現場から持ち出せない場合、自衛隊は市区町村や都道府県、警察などと協議し、現地で爆破処分を行うか、起爆装置(信管)の除去を行うかを決めます。そして自衛隊と行政が現地処理の日時や双方の役割分担などを決め、現地で処理することになります。 空港などの重要施設やその近辺、都市部で処理を行うとなると、交通規制や住民への周知などで周到な準備が必要になります。 2019年にマンションの建設現場で3発の不発弾を処理した東京都江東区では、1発目の発見から作業終了まで半年近くを要しています。 見つかったのは米国製の250キロ爆弾。この信管処理を現場で行う場合、半径300メートルほどを警戒区域に指定し、立ち入り禁止にしなければなりません。現場は有名な「有明テニスの森公園」近くで、総戸数約600戸の高層マンションや清掃工場、レインボーブリッジも警戒区域に含まれます。 それを実行すると、都市機能が麻痺する恐れもあったため、江東区は鋼鉄製の防護壁と土のうで現場を取り囲み、警戒区域の半径を100メートルにまで縮小することに成功しました。それでも防護壁の費用は1発で2600万円もかかったそうです。 不発弾の処理に伴う費用負担はどのようになるのでしょうか。