大谷住民、雪前に「第一歩」 本社記者ルポ、珠洲・仮設住宅に入居開始
●悪路には不安の声 珠洲市大谷町で能登半島地震後初の仮設住宅団地となる「大谷町第1団地」は2日、入居が始まった。豪雨もあって開始時期が延び、地震から11カ月を経て住民を迎えた。「何とか雪が降る前に入れた」。市内外の避難先から戻った入居者に安堵が広がる一方、道路事情の悪さから冬の生活を案じる声も聞こえた。(珠洲支局・松本琉太) 団地を訪れると、部屋に荷物を運び込む住民のそばで敷地の舗装工事が続いていて、市が降雪前に入居開始を急いだことがうかがえた。大谷町第1団地は狭い土地を有効活用するため、木造2階建て4棟に72戸が設けられた。市によると9割以上で入居が決まっており、空き部屋も間もなく埋まる見通しだ。 荷物を搬入していた則(のり)貞(さだ)武夫さん(82)は「狭いけど立派なところに入らせてもらった」と喜びを口にした。大谷町の自宅が全壊して妻を亡くし、加賀市内の親族宅に身を寄せていた。「団地の完成は、大谷のこれからを町全体で考えていく第一歩だ」と期待した。 3月から白山市内のみなし仮設住宅で暮らしてきた頼光孝一さん(79)も帰郷を喜んだ。ただ、「道路が危なくて冬の暮らしには不安がある」とも。 大谷では買い物するにも市街地まで出る必要があるが、幹線道路の国道249号大谷バイパスはいまだに不通。急坂やカーブが連続する細い迂回(うかい)路しかなく「降雪時や夜間は怖い」と訴える人は多いのだ。 さらには団地前の山の斜面は豪雨で崩れたままとなっていて「雨が降るのが恐ろしい」と言う人もいた。水道は今月中旬に復旧する見通しで、それまでは給水車が貯水タンクに水を供給する計画だが、水質検査に合格するまでは飲食に使うことはできない。しばらく不便が続きそうだ。 ようやく故郷に帰った住民が、心の底から安心して暮らせる日が早く来てほしい。