退職金が減少傾向なら、無理して定年まで働かずに50歳代のうちに転職したほうがいいのでしょうか?
50代に入ると、定年退職までそれほど長い時間はありません。なかには、「そのまま無難に退職を迎えたい」と考える人もいるのではないでしょうか。 しかし、近年退職金は減少傾向にあるといわれています。50代は、最後の転職のチャンスです。無理をして安い退職金を受け取るより転職を考えるべきなのでしょうか。そこで、50代で転職を迷ったときの考え方や退職金の現状について解説していきます。
実際に退職金は減少しているのか?
厚生労働省が、実施した「令和5年就労条件総合調査」から、退職金の傾向を見ていきます。令和4年の1年間における勤続20年以上かつ45歳以上の退職者で、大学・大学院卒の平均退職給付額は1896万円で、2018年は1983万円でした。5年間のうちに約87万円下がっていることが分かります。 ただし、同じ定年退職でも高校卒の場合は事情が変わります。管理・事務・技術職の高校卒の定年退職金は2018年では1618万円でしたが、2023年になると1682万円と増加傾向です。現業職の高校卒も、2018年は1159万円だったのに対し、2023年では1183万円に上がっています。 定年を待たずに自己都合で退職すると考えた場合も、大学・大学院卒は2018年の1519万円に対して2023年になると1441万円に下がっています。 一方、高校卒の場合は管理・事務・技術職と現業職のいずれも上がっており、必ずしも定年での退職金が減少しているとはいえません。実際には、業種や企業規模などで違いが出るため、自分の職場がどのようになっているか把握しておく必要があります。
転職時期による退職金の減少率は?
ところで、50歳代での転職は得策なのでしょうか。ここでは、(独)労働政策研究・研修機構の「ユースフル労働統計2022」から紹介していきます。 なお、このデータは厚生労働省「賃金構造基本統計調査」と中央労働委員会事務局「賃金事情等総合調査 退職金、年金及び定年制事情調査」の資料をもとにした、製造業で従業員数 1000 人以上の男性労働者における2019年の推計値です。同データによると、大学卒の人が50歳で転職した場合の減少率はマイナス39.8%、55歳で転職した場合はマイナス23.4%でした。