ロシア軍・志願兵の入隊ペースに陰りか“年収700万円”高額報酬の陰で異変
2024年、ウクライナで攻勢を強めたロシア。それを支えたのが、最大で“年収700万円超”という高額報酬で勧誘した志願兵だ。プーチン政権は多くの国民が軍に志願しているとアピールするが、この流れに陰りがみえるとの指摘もある。 (NNNモスクワ支局長 平山晃一)
■ロシア全土で志願兵の確保に躍起…大盤振る舞いも
2024年11月、ロシア中部の地方都市ウリヤノフスクを訪れた。街の中心部ではこの日、ウクライナ侵攻の“戦利品”といえる欧米の戦車などの展示会が開かれていた。国民の戦意を高めるために、各地方都市を巡回しているイベントで、多くの家族連れなどでにぎわっていた。 そんな会場内で唯一、人影が少なかった場所が、ロシア軍の志願兵を募集するブース。訪れた人の中にはテントをのぞき込むと「ここは違う」…そんな顔をして出て行く人も多かった。ただ、それでも時折、話に聞き入る人の姿がみられた。ブースから出てきた18歳の大学生に話を聞くと「まだ契約については考えていないが、危険な分、軍人の給与は高くて魅力的だ」と話していた。
ここ、ウリヤノフスクの平均年収は、日本円で約50万円。ロシア軍に入隊すると、一時金を含めた初年度の年収は、その10倍の約500万円にも上る。こうした報酬を記載した看板は街のあちこちにあり、全てのバス停にポスターがはられていた。街に住んでいれば、いやがおうでも目につく状況だ。 私たちが現地を取材して3日後には、州知事が入隊一時金をさらに1.5倍に引き上げた。いま、ロシアの各地域では競うように一時金を大盤振る舞いし、志願兵をかき集める動きが過熱している。首都モスクワでは、初年度で700万円を超える年収を提示するほどだ。
■違法な勧誘も横行か
一方で、独立系メディアは、違法で強引な勧誘も目立つようになっていると指摘する。建設の仕事に応募したある男性は、面接に行くと軍の関係者がいて、仕事内容はリスクのないインフラ工事だと言われたと話す。彼らを信用して署名すると、軍の訓練場に連れて行かれ、そこで初めてだまされたと気がついたという。 また、ロシアでは、春と秋に若者を対象にした徴兵が実施される。義務兵役に基づくもので、ウクライナへの派兵はないのが決まりだが、こうした徴集兵を脅して、無理やり志願兵として契約させるケースも相次いでいるとされる。 さらに、24年からは受刑者に加え、刑が確定していない被告人や容疑者にも勧誘の範囲を拡大した。「裁判を受けるか、戦場に行くか」選ぶよう圧力をかける形だ。地方当局が貧しい人や借金を抱える人、犯罪歴のある人に対して、ねつ造した罪状で長期の刑をちらつかせ、無理やり入隊を促すケースなどもあると報じられている。