偏頭痛、不眠、バセドウ病まで発症…発達障害がある夫との関係に病んだ私を救った意外な「気づき」
偏頭痛、不眠、バセドウ病に希死念慮…私を襲った不調の嵐
話が逸れるようですが、「カサンドラ」という言葉をご存じでしょうか。ASDの人とうまく情緒的な関係を築くことができず、心身に深刻な不調が出ている状態を「カサンドラ症候群」ということがあります。医学的に確立された診断名ではないので、私は「カサンドラ状態」と呼んでいますが、過去の私が、まさにこのカサンドラ状態でした。 偏頭痛、生理不順、不眠、バセドウ病の発病と悪化、対人恐怖などに苛まれ、毎日「消えてしまいたい」と泣いていました。そんなときにアキラさんがASDだとわかり、光が見えた気がしました。何か変わるのではないかと思ったのですが、しかし、アキラさん本人は困っていないので、何の変化も起きませんでした。 そこで私は発達障害がある人との接し方をいろいろと学び始めたのですが、何をやってもうまくいきませんでした。うまくいかなかった原因は、いま考えると2つあったと思います。
目の前の「人」を見なければ問題は解決しない
ひとつは、そもそも「カサンドラ状態」だったからです。心と体が元気なときはある程度、対応もできるんですけど、元気じゃないときは、理想的な振る舞いをしようと思っても難しいのです。 そしてもうひとつ、こちらのほうが重要なのですが、私はずっと「ASDの人の特徴はこう」「ASDの人にはこう接してあげよう」という一般的な情報を鵜吞みにし過ぎていたのでした。言い方を変えると、ASD=アキラさんだと思い込んでいたのです。 でも実際はそうではありません。ASDの前にまず人間です。そして人間には個性があります。本のなかに書かれているASDのいろいろな特性のうち、アキラさんに色濃く出ているものはもちろんありましたが、逆にあまり見られない特性もありました。だから個性を無視して「ASDはこういうもの」と決めつけて対応しても、うまくいかない部分が出てくるのです。 ただでさえ、「あの人」との関係性のなかで疲れて弱っているのに、頑張ってもうまくいかない。試行錯誤すればいい手立てが見つかったかもしれませんが、そんな発想がでてくることもなく、ひたすら〈何をやってもうまくいかない〉とネガティブな考えになってしまっていたのです。 実際は、アキラさん個人の性格や特徴、何が嫌いで何が好きか、どうすればこちらの言葉を受け取ってもらえるのか……そういったことをちゃんと見極めるところから始めて、そのうえでアキラさんに合いそうな対応法を使う必要があったのでした。 後編記事〈外では「良いパパ」とほめられるのに…発達障害がある人が自宅では「まるで別人」になる深いワケ〉へ続く。 *この記事は2024年9月29日に東京メンタルヘルススクエア主催で行われた講演をもとに構成しました。
野波 ツナ(漫画家)