選挙の予想が大外れしたエリートが「愚民」をバカにしているという「悲惨すぎる現実」
「愚民をつい馬鹿にしちゃう」
2024年は、「知性ある人々」にとって不幸な一年だったようだ。「愚かな人々」が社会で存在感を増したためである。 【写真】子ども時代に「ディズニーランド」に行ったかどうか「意外すぎる格差」 さかのぼること7月7日、東京都知事選挙が行われたが、結果が望み通りではなかったらしい人々の中にはSNSで次のように嘆く者がいた。 反知性の愚民化ってのは、本当に下品だけど、いい作戦なんでしょ。相手は賢いよ。 今回愚民ではない市民と街で会えた。これは蓮舫さんのおかげだよ。 愚民をつい馬鹿にしちゃう我々のクセ、これはもっと深く研究し、改善しなくちゃ。(※1) 事情はよくわからないが、たぶん投稿者が推す候補が「愚民」たちに支持される候補に負けてしまったのだろう。 11月5日には米国の大統領選挙が行われた。接戦になると言われていたが、結果は共和党のドナルド・トランプが予想外の勝利を収めた。その最中、ある映画評論家はなぜか、不意にSNSにこんな投稿をする。 残酷な事実:アメリカの赤い州(共和党が強い州)は州民の大卒率が全米平均の大卒率43.1%より低く、平均より大卒者が多い州は青い州(民主党が強い)になる。大卒率が全米平均くらいの州は共和党と民主党が拮抗する「接戦州」になる。(※2) さらには11月17日には兵庫県で県知事選が行われ、パワハラの疑いなどで告発され県議会が不信任を議決し、失職していた前知事の斎藤元彦が二度目の当選を果たした。これもやはり予想外の結果だったが、SNSの影響が大きかったとも指摘されている。そしてやはりこの結果にがっかりしたらしい元官僚は、SNSでこう嘆いた。 「バ○は死ななきゃ治らない」とは言わない。学べば治る。賢くなれる。斉藤を当選させた兵庫県民も。(※3) 今日、「愚民」たちにイラつくエリートはかれらに限らない。世界中で、愚かで下品な「愚民」たちを軽蔑するエリートと、その「上から目線」に反発する大衆の分断が起こっている。それは、エリートに批判的な英国の論客、オーウェン・ジョーンズの言葉を借りるなら「文化戦争」である(※4)。 ただジョーンズは同時に、インテリにこうアドバイスしている。「英国で左派に将来があるなら、労働者階級の人々の生活やコミュニティとの文化的、政治的な断絶に向かい合わなければならない」。 日本にとっても他人事ではない。とくにインテリ層によって構成される左派は、過去にも「愚民」たちとの付き合いに失敗してきたからだ。