糖尿病は酒で予防できる!? 「肥満の人は飲酒でリスク低下」日本人10万例の研究結果で判明
研究グループが発表した内容への受け止めは?
編集部: 京都府立医科大学らの研究グループが発表した内容への受け止めを教えてください。 中路先生: 今回の京都府立医科大学らの研究グループらの論文は、「飲酒」と「肥満の度合い」がどのように「糖尿病リスク」と関係しているかを調べた大変興味深い研究結果であると考えます。 ただし、後ろ向きの観察研究であることや、アルコールの種類やアルコールを分解する酵素の個人差などは加味されていないなどの限界もあります。また、あくまでも日本人の限られた集団の検討であるため、食生活の異なる人種を含めた多人数での前向きな検討が今後は期待されます。
適切な飲酒の目安は?
編集部: 今回紹介した研究では、BMI25以上の人はアルコール摂取量に関わらず、飲酒は糖尿病リスクの低下と関連していたという結果が示されましたが、研究グループは「摂取量にかかわらず飲酒の有害作用を示すエビデンスがあることから、糖尿病予防のための飲酒は推奨されない」と注意喚起もおこなっています。適切な飲酒についてガイドラインなどはあるのでしょうか? 中路先生: 飲酒のガイドラインについては、厚生労働省が「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」を作成しています。このガイドラインは、基礎疾患がない20歳以上の成人を中心に、飲酒による身体などへの影響、年齢・性別・体質などによる違い、飲酒による疾病・行動に関するリスクなどを分かりやすく伝え、その上で考慮すべき純アルコール量や飲酒の際に留意してほしい事項を示すことにより、飲酒や飲酒後の行動の判断などに資することを目指したものです。 ガイドラインでは生活習慣病のリスクを高める飲酒量として、国の基本計画で1日あたりの純アルコール量を男性で40g以上、女性で20g以上摂取した場合と定義されています。20gはビール中瓶1本、日本酒1合に相当します。みなさんもぜひ一度ガイドラインを見てみてください。
編集部まとめ
京都府立医科大学らの研究グループは、「BMI25未満の人は、1日あたりのアルコール摂取量が39g以上の場合に糖尿病リスクが29~36%上昇する一方で、BMI 25以上の人はアルコール摂取量に関わらず、飲酒は糖尿病リスクの低下と関連していた」という研究結果を発表しました。研究グループも注意喚起していますが、糖尿病予防のための飲酒は勧められていないので、ご注意ください。 [この記事は、Medical DOC医療アドバイザーにより医療情報の信憑性について確認後に公開しております]
この記事の監修医師
中路 幸之助 先生(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター) 1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。