『光る君へ』を彩る<彰子サロン>女房たちの裏事情。倫子の姪<大納言の君>は道長の愛人で「藤式部と呼ぶ」と宣言した<宮の宣旨>はまさかの…
◆紫式部の親友「小少将の君」とキャリアを買われた「宮の内侍」 次に「小少将の君」。ドラマでは福井夏さんが演じていらっしゃいますが、彼女は「大納言の君」の妹で、紫式部の親友です。 「二月(旧暦、今なら三月後半)の若芽が出て枝垂れ始めた柳のような人」とされ、この表現は『源氏物語』「若菜下」にある、光源氏の二人目の正妻、女三宮と共通します。 小少将はひきこもり系の子供っぽい人ということなので、自分を表に出さず、なよっとした女三の宮のモデルかもしれません。 その中で少し例外的なのは「宮の内侍」で、本名を橘良芸子という、藤原氏以外の出身です。 彼女は彰子が中宮になった頃から内侍(掌侍)、つまり秘書官長を務めています。もともと道長の姉の東三条院詮子に仕えていた人なので、キャリアを買われて送り込まれたようです。 清楚で堂々とした中に華やかで愛嬌があるとしています。 これら上臈の女房たちは、ルックスや礼装の色使いなどのファッションセンスがいかに素晴らしいかを絶賛されていいます。 紫式部は意外に計算高い人なので、読み手の印象を意識した、いわゆる「ヨイショ」も多いのかもしれませんが、やはり彼女たちは採用の段階でセレクトされた人たちなのでしょう。ということは、上臈女房らは特別な教育を受けていたエリートと考えられます。 でもそれって、彼女らが上臈女房になるのではなく、もっと上、つまり「妃がね(お妃候補)」として育てられた人だということではないのでしょうか?
◆<藤式部と呼ぶ>と宣言した「宮の宣旨」、実は… そうした中に「宣旨の君」あるいは「宮宣旨」という女房がいます。 ドラマ内では値踏みするような視線でまひろを迎い入れ、これからは藤式部と呼ぶと宣言した、あの「宮の宣侍」ですね。小林きな子さんがその役を演じていらっしゃいます。 ちなみに『紫式部日記』では、「小柄でほっそりしており、きれいな髪が一尺ほどの着物の裾から伸びている。気品のある人というのはこういう人のことを言うのだろう」と絶賛されています。 彼女は中宮の言葉を貴族たちに伝えるスポークス・パーソンを務めており、のちには彰子の産んだ後朱雀天皇の乳母になったとも言われます。 その本名を源陟子といい、実は醍醐天皇皇子の兼明親王の孫にあたります。 兼明親王は、一度臣下に降りて左大臣源兼明になったのに、また皇族に戻されたという、体よく左遷された大臣。その兼明の嫡子が権中納言源伊陟といい、宣旨の君はその娘にあたるので、醍醐源氏ということになります。 つまり天皇の子で政界有力者だった人物の孫が、彰子の女房務めをするようになっているのです。確かにエリートなのですが、まさに醍醐源氏の衰退を象徴しているような人物なのですね。
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