人生は、まだまだよくわからないし、油断できないーー仕事に育児に奔走する、吉田鋼太郎63歳
人生は、まだまだよくわからないし、油断できない
泥臭くもひたすらに、舞台の世界に挑戦し続けてきた吉田。 90年代はトレンディドラマで輝く同世代の俳優たちを横目に、「やっかみ半分、強がり半分」だったと漏らす。50代から映像の世界に進出してからは「テレビで見ていた人気俳優たちと共演できて、夢のようだった」と素直に語った。 今、60代を迎え、人気は高まる一方だ。俳優としても、演出家としても、脂がのっている。プライベートでも家族が増え、幸せを噛み締めている。 人生の後半で成功を収めている理由は何だと考えているのだろうか。 「うまくいっています、俳優として。これは間違いなく。でも、それが不思議なんです。どうして成功したんだろう。どんな仕事でもそうだと思うんですけど、みんな同じように、またはそれ以上に努力をしている人がいる。容姿がもっと良かったり、持って生まれた才能が秀でていたり、いろんな人がいますよね。それでも、売れなかったりする。そんな中で自分がこのポジションにいることは、運もあるのかもしれませんけど…でもその運ってなんだろうとも思いますし。とにかく、不思議でしかない。だから、今気を付けるようにしていることは、ここで思い上がったり、安心したりしてはいけない、ということ。人生は、まだまだよくわからないし、油断できないものだなと思っています」
若い頃から、こんなふうに慎重に考えていたのかと尋ねると、いやいや、と首を振った。 「今だからそう思うんですね。若いときはむしろ、たかくくったり、油断してるほうがいいんですよ。のびのびやったらいい。…今は、やっぱり失敗が怖いですよね。ヤフーニュースが怖いです(笑)」 10代から進路を決め、演劇一筋で生きてきた。 ほかに何も見えなかったが、一つのことに的を絞ることができたのはラッキーだった、と振り返る。 「途中で脇道に逸れないで、挫折もしないで、よくぞあんたやってきたね、と自分に言いたい。継続できたことは、自分で自分をちょっと褒めてやりたいと思います」 ___ 吉田鋼太郎(よしだ・こうたろう) 1959年、東京都生まれ。俳優、演出家。舞台を中心に、シェイクスピア俳優として、また演出家としても活躍する。ドラマ「半沢直樹」「花子とアン」でブレーク。2016年、蜷川幸雄の後継として『彩の国シェイクスピア・シリーズ』の2代目芸術監督に就任。「おっさんずラブ」「今日から俺は!!」「刑事七人」など、人気ドラマ、映画に出演。今年3月21日から東京国際フォーラムで公演のミュージカル『ブラッド・ブラザーズ』では演出を務める。