36歳の「サラリーマン区長」の挑戦 もともと内気で最初は“区費を納めるだけ”だったが…不要なものは取りやめ「働きながらできる」を目標に
長野県安曇野市豊科の成相(なりあい)区区長を2023年4月から務める寺田一樹さん。中部電力パワーグリッド(名古屋市)の県内営業所に勤務しながら、会合出席や書類作成、行事参加といった区長の業務に精力的に取り組む。市地域づくり課によると、36歳の区長は市内全83区で最年少だ。「サラリーマンであることを生かし、仕事でいいなと思ったアイデアを自治会でも取り入れたい」と語る。 【写真】サラリーマン区長が暮らす長野県安曇野市
普段の仕事は電力関係
福井県春江町(現坂井市)生まれ。幼い頃から「内気で人見知りな性格」だった。同県の高専を卒業し、中部電力(名古屋市)に入社。松本市の松本営業所(現中部電力パワーグリッド松本支社)に配属され、電柱の設置や移設を手がける業務に従事した。
町内会や氏子総代…次第に興味が湧くように
結婚を控え新居を探していた11年、職場の先輩に紹介された安曇野市豊科のアパートに引っ越した。当初は区費を納める以外に自治会の存在を意識する機会はなかったが、3年ほどたって、健康増進の啓発を担う町内会の「健康づくり推進員」を引き受けたことを契機に見方が変わる。
地域の神社の氏子総代にもなり、住民と語り合ったり、酒を酌み交わしたりするうちに区の活動に興味が湧いた。当時の役員に推され19、20年度に成相区の庶務を21、22年度に副区長を務めた。以来、前例踏襲が多かった区の業務改革を進める。
会議数の減少…前例踏襲から業務改革へ
その一つが会議の回数削減だ。従来は予算や決算、規約などに関する会議が年に計10回以上あったが、新型コロナウイルス下の「密」を回避する流れも踏まえて減らすべきだと提案した。1回の会議の内容を充実させつつ、不要な会議は思い切って取りやめることで8回ほどに減らした。
年度当初の役員の負担を緩和しようと、予算の承認時期は4月から2月に変更した。予算規模も実態に合った金額にするため、適正化を呼びかける。「現役で働きながらでも運営できる活動を目標に、変えられるところを変えていきたい」と力を込める。
成相区の人口は約3200人。一方、区の構成員は1887人(5月1日時点)で加入率は6割を切っている。若い転入者が加入を拒んだり、体が衰えて地区活動への参加が難しくなった高齢者が抜けたりするケースが増えて加入率は減少傾向にあるという。
「よそ者を受け入れてくれた」と感謝
成相区の住民は「人と話すのが苦手だったよそ者の自分を温かく受け入れてくれた」と感謝の思いは強い。それだけに地域のつながりが薄れて孤立する人が出ないか気がかりだ。「どこから来た人でも、どんな人でも地域の仲間であることに変わりはない」。時代の流れに合った区の在り方を模索している。 (難波淳)