物価高の逆風で2023年10-12月期GDPは予想外の下振れ:経済・生活実感とずれる株高進行:日本のGDPはドイツに抜かれインドも迫る
個人消費と設備投資のマイナスが続く
内閣府が2月15日に公表した2023年10-12月期のGDP統計(1次速報値)で、実質GDPは前期比-0.1%、前期比年率-0.4%と予想外に下振れ、2四半期連続でのマイナス成長となった。事前予想の平均値は、前期比年率+1.2%程度だった。 インバウンド需要を含む実質輸出は前期比+2.6%と拡大したが、実質個人消費は同-0.2%、実質設備投資は同-0.1%と、事前のプラス予想に反してともに3四半期連続のマイナスとなった。また、前期に大幅に下振れた実質在庫投資の成長寄与が同-0.0%と予想よりも小さかったことや、実質輸入が同+1.7%と予想外に大きく増加したことも、予想外の成長率下振れの要因となった。 日本経済は、インバウンド需要と米国向け輸出の堅調さなどによって辛うじて支えられている脆弱な状態だ。 個人消費は引き続き物価高、実質賃金低下の強い逆風に晒されている。昨年の春闘では賃上げ率は予想外に上振れたものの、名目雇用者所得は4-6月期の前年同期比+2.6%をピークに、10-12月期には同+1.4%まで低下が続いた。他方で国内需要デフレータは10-12月期に同+2.0%と緩やかに低下しているもののなお高水準にあることから、10-12月期の実質雇用者報酬は同-1.9%と大幅下落を続けている。
2023年名目GDPで日本は世界第4位に転落。2026年にはインドにも抜かれる
2023年の実質GDPは前年比+1.9%、名目GDPは+5.7%と高めとなった。しかし、ドル建て換算の名目GDPは4兆2,106億ドルとなり、ドイツの4兆4,561億ドルに抜かれ、世界4位に転落した。 しかし、日本よりも上位にある国の経済環境も、決して良好とは言えない。中国は不動産不況、供給過剰、人口減少といった構造問題を抱え、この先成長率は一段と低下していく可能性が高い。大幅利上げの影響や商業用不動産市場の調整を受けて、ドイツはほぼ景気後退の状態にある。米国経済は比較的堅調ではあるが、大幅利上げの影響、企業の過剰債務の問題、商業用不動産の調整、中堅・中小銀行の経営問題などから、中期的に経済が低迷する可能性もある。 国際通貨基金(IMF)は、2026年にインドが日本のGDPを上回ると予想しており、日本は近い将来、GDPで世界第5位に転落する可能性がある。しかし重要なのは、経済規模だけではない。人口減少が続く中でも、一人当たり生産性を高める取り組みを続けることで、より豊かな生活を実現することは可能だ。 この先、行き過ぎたドル高円安が修正されるとともに、政府の成長戦略、企業、家計による生産性向上の取り組みを進めれば、再びドイツのGDPを上回り、先進国で世界第2位を奪還することはなお可能なのではないか。