家の猫の話 Vol.7/執筆: ピエール瀧
近年できた新しい単語、猫吸い。 猫の体に人間の顔面を押し付け、その匂いを思い切り吸い込んでうっとりするという一種のヒーリング(?)行為なのですが、これが成立する要因として“猫には体臭がほとんどない”が一役買っていると思われます。 家の猫の話 確かに家猫には体臭がほとんどありません。野良猫で、軒下や縁の下で日々暮らしている自由生活の連中には、それなりに生活臭(というか異臭)があるでしょうが、それらの臭いは猫本体から発せられているのではなく、おそらく環境の臭いが染み付いた結果によるモノでしょう。 実は猫の体には汗腺というものがなく、汗をかくのは鼻と肉球のみらしいです。しかしそれも体温調節のためではなく、緊張や不安から汗をかいているとのこと。冷や汗に近いんですかね。では猫たちはどうやって体温調節をしているのでしょう? 犬なんかの場合だと、舌を出して「ハァハァ」やって体の熱を逃しているのは割と知られています。猫の場合は、体を舐めて、その水分が蒸発する時に起こる“気化熱”を利用して体温を下げたりしているそうです。ちょっと濡らすと涼しいってやつですね。ということは、無心に体をぺろぺろやりまくっている時は、彼らの体温が高くなってしまっているのかもしれません。注意。 そんなわけで、ウチで買っている3匹の猫たちからも当然異臭はしません。とはいえ匂いが全くないわけではなく、それぞれ固有のなんともいえない匂いを持っています。以下が我が家の各猫をオイラが猫吸いした結果。
コンブは太陽に干した後のバスタオルというか、ちょっとホコリっぽいような、乾燥した藁のような少しだけ香ばしい匂い。頼り甲斐のあるお父さんのような匂いとでも言いましょうか。 コロッケは末っ子らしくほんのり甘いメープルシロップのような臭い。嫁に言わせると、たまにカレー粉のような匂いの時もあるとのこと。 ブイヨンはマジでほぼ完全に無臭。集中してよーく探ると、うっすら毛皮のような匂いがします。まあそりゃそうか。文字通りの毛皮ですから。 コンブとブイヨンは少なくともここ7~8年はお風呂に入れて体を洗っていません。まあ彼らがお風呂を好きじゃないってのもありますし。コロッケもウチに来た日(子猫状態)に体を洗ってあげてから一度も風呂に入っていません。それでもこの結果なのですから、猫は臭くならない、そしてかなりの綺麗好きだということが証明されたのではないでしょうか。
プロフィール
ピエール瀧 ぴえーる・たき | 1967年、静岡県出身。1989年に石野卓球らと電気グルーヴを結成。道行く人に「あなたのオススメは?」と尋ね、その返答の通りに旅をするYouTube番組『YOUR RECOMMENDATIONS』が好評配信中。著書に『ピエール瀧の23区23時』(産業編集センター)、『屁で空中ウクライナ』(太田出版)など。『地面師たち』(大根仁・監/Netflix)、『HEART ATTACK』(24年秋以降、FODで配信予定)にも出演予定。 photo & text: Pierre Taki, edit: Ryoma Uchida
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