知らぬまにスピード超過で“法律違反”状態に…電動キックボードの黒船「Lime」に“4つの問題点” 運用会社の見解は
初回利用時の“交通テスト”はわずか6問
Aさんの「あっさり感」には一理あった。Limeの乗車前テストの設問は計6問。対して現在、LUUPを利用するには11問をパスしなくてはならない。しかも、Limeの場合には、回答を間違えてもやり直しになるわけではなく、続けて別の選択肢をタップしテストを続け、そのままクリアできてしまうのだ。 昨年7月の道路交通法改正の規制緩和により、電動キックボードは運転免許証の必要な「原付」扱いから、「特定小型」となり、一定の条件をクリアすれば免許なしで乗ることが可能となった。だからこそ厳密な交通ルールテストが求められるはずだが……。 業界団体である「マイクロモビリティ推進協議会」に、テストについて尋ねると――。 「交通ルールテストについては、マイクロモビリティ推進協議会に加盟している全事業者に対して、警察庁とともに作成したひな型を提供し、それに基づいて運用することとなっています。これは、道路交通法と関係事業者に遵守が求められるガイドラインに基づく取り組みです。テスト内容は警察庁が監修し、カバーすべき項目についてフィードバックを経て構成されており、各社には漏れなく記載することを求めています」
速度が限界突破、知らぬ間に無免許運転に?
テストだけでなく、Limeには他にも安全上の懸念があるという。Aさんによれば「LUUPより明らかにスピードが出た」というのだ。Limeには車体のボタンで設定できる最高速度が時速6kmの「歩道モード」のほか、アプリ上から選択できる最高速度が時速12kmの「トレーニングモード」がある。Aさんがトレーニングモードを試した際の状況を次のように振り返る。 「トレーニングモードを終了したあと、急に速度が出るようになったんですよ。フルスロットルにすると、体感では原付バイクとあまり変わらないぐらいの速さになったのです」(同) Aさんが偶然見つけた「速度限界突破」の“裏技”を、実際にLimeで検証してみた。 Lime、そして比較のためにLUUPをそれぞれレンタルし、まずはふつうに走り比べてみた。フルスロットルの状態で、両者の速度は互角。簡易速度計は時速20kmと表示された。 次にAさんと同じように、一度「トレーニングモード」にした後に機能をOFFにしてみると――。 驚くことにLimeの走行速度が急激に上昇。並走させたLUUPを軽々と抜いてしまったのだ。手元の簡易速度計の表示は時速25kmを超えている。 先の協議会は一般論と断った上で、こう指摘する。 「特定小型原動機付自転車は、道路交通法の施行規則で“時速20km以上出せない車両”と定義されています。逆に言えば、20km以上出せる場合は、特定小型原付の定義を外れ“一般原付”と認定される可能性があります。この場合、整備不良車両の運転と提供のほか、利用者が運転免許証を保有していなかった場合は無免許運転に問われる可能性があります。提供をした事業者も法律に違反し、罰則の対象となる可能性も考えられます」 知らない間に“無免許運転”になってしまうかもしれない、というのだ。 なお、検証は安全を確保した私有地で実施した。検証後、車両を料金の発生する「一時停止」状態で敷地に駐車し、しばらくそのままにしていたところ、アプリに「お客様の利用を終了しました」との表示が出現。自動的に清算が行われ、車両はアプリのマップ上で「乗車可能な車両」として開放されてしまった。車両はほどなくして、私有地内にやって来た人物が乗り、去っていった。一般の利用者なのか、Limeの回収係なのか……。 本当ならば所定のポートへ返却しなければ、利用は終了できないはず。予期せぬ形で発覚したが、このシステムでは、事実上どこでも“乗り捨て”ができてしまうことも気になるポイントだ。