「保護の成功例」カッショクペリカンが謎の大量餓死、餌はあるのになぜ、米西海岸
原因は?
米魚類野生生物局によれば、2022年に同じような飢餓が発生した際には、800羽近くのカッショクペリカンが野生動物のリハビリ施設に入れられ、394羽が野生に戻された。残念ながら、命を落としたペリカンの解剖では、飢餓の原因を突き止められなかったとスミス氏は述べている。 米非営利団体サンタバーバラ野生生物保護ネットワーク(SBWCN)は、2024年に入ってから116羽のペリカンを保護している。2022年は270羽だった。 「生息環境で起きていることに関連して特定の種が私たちの施設に押し寄せるのは、今回が最後ではないでしょう」とSBWCNの事務局長アリアナ・カトビッチ氏は予想する。「そのため、私たちにとっては、それぞれの出来事から教訓を学び、生かすことが重要なのです」 今回の危機も原因はほとんど解明されていないが、いくつかの興味深い推測が飛び交っている。たとえば、天候が原因だという説だ。強風や視界の悪さがペリカンの潜水を妨げているというのだ。この説は、漁具によって負傷したペリカンがたくさん保護されていることの説明にもなる。空腹のペリカンが釣り針にかかったり、釣り糸に絡まったりすることがよくあるためだ。 鳥類保護団体インターナショナル・バード・レスキューの研究・獣医学ディレクターであるレベッカ・デュール氏によれば、鳥インフルエンザの検査まで行われたという。2024年に入ってから新たに多くの哺乳類が感染しているが、幸い、弱ったペリカンから陽性反応は出なかった。
ほかの生きものへの影響は?
多くのカッショクペリカンが命を落としているものの、ほかの海洋生物は影響を受けていないようだ。少なくとも今のところ、専門家の目に見える変化はない。 カッショクペリカンが立たされ続けている苦境に対して、直接の原因ではないにせよ、人為的な環境の変化がどのくらい責任を負っているのかは、さらに見極めが難しい。 カッショクペリカンは保護の成功例とされてきた種だが、今は2年前と同じように飢えている。それが専門家にとって唯一確かなことだと、カリフォルニア州魚類野生生物局の上級環境科学者レアード・ヘンケル氏は言う。 「人間が直接引き起こしたことだと示唆する兆候はありません」とヘンケル氏は述べている。「私たちが知る限り、原因は人間の行動ではありません」
文=Tatyana Woodall/訳=米井香織