消防士や大工が知識・技術生かしボランティア活動に 被災者に寄り添った「優しい活動」心がけるDRTJAPAN山形【山形発】
7月の記録的な大雨で大きな被害があった地域では、今もボランティアが入っての復旧作業が続いている。そこで活躍しているのが人の手では難しい作業を専門的に行う技術系のボランティア。その活動を追った。 【画像】住民の依頼を受け家の前の道路にたまった土砂を撤去しているDRTJAPAN山形
専門技術で支援 DRTJAPAN山形
8月の終わり。大雨の被災地、酒田市でボランティア活動を行っていたのは、重機を使って専門的なボランティアを行う団体「DRTJAPAN・YAMAGATA」だ。 取材した日は酒田市常禅寺地区で、住民の依頼を受け家の前の道路にたまった土砂を撤去していた。 DRTJAPAN山形・佐藤信一さんは「重機やチェーンソー・ロープワーク・高所作業ができるよう普段から訓練している団体です。知識・技術を生かした活動がこういった場面で有効になる」と話す。 DRTJAPAN山形のメンバーは約10人。普段は現役の消防士や大工として働いている。代表を務めるのは、米沢で消防士として活動する我妻清和さんだ。 DRTJAPAN山形立ち上げのきっかけは、2年前に新潟県北部で発生した豪雨の被災地で技術系NPO・DRTJAPANの活動に参加したことだった。 DRTJAPAN山形代表・我妻清和さん: はじめて技術系のボランティアを見た時に、“本当にかっこいいな”と思った。すごく被災者のために活動している姿を見て、“自分もああいう風になりたい”と思った。消防士の活動は捜索・救助活動が終わるといったん終わりで、その先の復旧・復興を自分も見たことがなかった。みなさんの活動ぶりに、こういう人がいないと復旧・復興はしないんだろうなと思ったのがきっかけ。 いつ県内でも起きるかわからない大きな災害に備えて、我妻さんは集まった仲間と共に活動を始めた。
復興の手助けに 寄り添った優しい活動
そして7月25日、県内で記録的な大雨が発生した。DRTJAPAN山形は酒田市・戸沢村などの被災地に入り、家の中や敷地に大量にたまった土砂・流木の撤去など、人の手では難しい場所の復旧作業にあたってきた。 メンバーの1人、佐藤信一さんは普段、酒田市の中心部にある消防分署の係長だ。大雨の当日は100件近い通報が入った。 DRTJAPAN山形・佐藤信一さん: だいたいが「水が冠水して床上まで来て逃げることができない」という感じだった。皮肉な話というか、自分たちの所で災害が起きた時にどういった活動ができるのかという思いがあって各地のボランティア活動に参加していたが、まさか本当に自分の管内でそういった災害が起きると思っていなかった。消防の活動もしつつボランティアも進めていかなくてはいけないので大変な状況。 発災から2カ月半。消防士として働きながら、非番の日にボランティアに向かう日々を続けている。 酒田市内で行うボランティア活動のまとめ役を担っている佐藤さん。朝のミーティングで「話すことも大切な活動なので“優しい活動”を心がけて活動しましょう」と話していた。 10日の活動場所となったのは、大雨ではん濫した荒瀬川がすぐ近くに流れる上青沢の三保六橋近く。流木と土砂が押し寄せ使えなくなってしまった農業用ビニールハウスの撤去作業だ。 解体した鉄パイプをトラックに積んでいくが、佐藤さんは鉄パイプについたビニールが取れないか気にしていた。鉄についたビニールもきれいにはがすことによって鉄くずを回収してくれる業者に持って行くことができるのだ。 佐藤さんは「鉄くずを回収してくれる業者に持って行って、少しでも現金に変えられるなら変えたい。変えたものはお宅の住人の方に還元できれば、ちょっとの額にはなるが少しでも手助けできるかなと思って」とただ片付けるだけではなく、「優しい活動」を実践していた。 依頼した住民も「最高にありがたい。あんなの人の手ではなんともならないから、助かった。すごく助かった」と笑顔で話す。 佐藤さんの姿を見て活動に加わった後輩もいる。重機の免許も持ってなく、はじめてのボランティアだと話す齊藤達也さんは、「重機の免許も持ってないので最初は敷居が高いのかなと思っていたが、そんなことはなく、自分たちのできる範囲で。消防にもつながるような活動が多くあるので仕事にも生かせるし、信一さんがよく言う『優しい活動をしましょう』という意味がよくわかるなと感じる」と語った。