「みんなノリノリで演じていた」映画『ゼンブ・オブ・トーキョー』熊切和嘉監督インタビュー。日向坂46四期生との共演を語る
年齢を重ねて見えた“青春”の輪郭
―――これまでの熊切監督の作品とは異なり、本作は学生同士のキラキラした友情を描いた青春映画です。本作の企画を聞き、どのように感じましたか? 「これまでの映画にも青春の要素が含まれているものはありましたが、1本の純粋な青春映画として意識して撮ったことはありませんでした。最近になって、それをどうしてもやってみたいという気持ちが湧いていたんです。それはおそらく、自分が年を重ねたことが関係していると思います。 50歳になると、10代のあの頃の、文字通りの青春時代には、逆立ちしたって戻ることができないと強く感じるようになって。絶対に戻ることはできないからこそ、あの感覚を、せめて映画の中で捕まえてみたいと思うようになりました」 ―――そのような感覚を意識し始めたのはいつ頃からでしょうか? 「45歳を過ぎたあたりからですかね…。自分に子供ができたことも影響していると思います。それまでは自分のことを、まだまだ青春の真っ只中にいると思っていたんですが(笑)、子供ができると未来のことも考えるようになりました。 それに合わせて、過去も自然と振り返るようになりました。『あの時の友達にもう何十年も会っていない』とか、『卒業しても普通に会えると思っていた友人に、一度も会っていない』とか。そういうことがどんどん蘇ってきて、青春映画を撮りたいという気持ちが強まっていきました」 ―――本作には日向坂46の四期生メンバーが全員出演していますが、撮影が始まる前に、彼女たちにインタビューをされたそうですね。 「最初は誰が誰だか全然わからなくて(笑)。最初のインタビューに、僕は別の作品に入っていて参加できなかったんですが、脚本家とプロデューサーがインタビューしたものを後から見させていただいてから実際に会うと、それぞれ全く違う個性を持っていて驚きましたね。それでいて全員がピュアで素直なところがすごく印象的でした」 ―――インタビューや直接皆さんから聞いたエピソードなどは、脚本やキャラクター作りに影響されているのでしょうか? 「インタビューを行い、その内容を脚本家の福田さんがエピソードとして物語に織り交ぜてくれました。 その後、インタビュー映像を見ながら、ぼんやりと配役の構想が浮かんでいましたが、実際には本読みを行い、いろいろな組み合わせを試しながらオーディション形式でキャスティングを決めていきました。最終的に、それぞれの役柄のバランスを見ながら配役を当て込んでいった形です」 ―――インタビューの中で、印象に残ったエピソードなどはありますか。 「やはりメインストーリーにしている桐井智紗がアイドルに関わる部分の、そのもとになったエピソードですかね。“ミーグリ”に参加して、『こっち側にこない?』と言われるシーンですが、実際は何人かのエピソードをミックスさせているのですが、特に印象に残っています」 ―――アイドルになる夢を語っていた桐井には、彼女たち11人全員の思いや気持ちが重ねられているようにも感じられました。 「そうですね。池園(正源司陽子)は、ある種の狂言回しのような主人公です。それに対して、桐井の存在は非常に重要で、いわば“裏の主役”のような位置づけですね。みんなもそのことをよく理解していたと思います。 特に、桐井があることを告げた後の、他のキャストたちの表情が印象的でした。全員がその瞬間、桐井の気持ちを我がことのように理解しているのが伝わってきました」