【甲子園】開会式「励ましのことば」で「舞台裏」を披露した日本高野連・寶馨会長
「一つひとつのプレーを大事に」
【第106回全国高等学校野球選手権大会▼開会式】 夏の甲子園の「舞台裏」を披露した。大会使用球はどのような過程で、球審から投手へと手渡されるのか。日本高野連・寶馨会長(大会審判委員長)は開会式の「励ましのことば」であまり知られていないエピソードをスピーチした。当たり前のように使われているボールも、多くの人が関与している事実がある。 「今年の春から、金属バットの反発を少し抑えました。これは、大会の使用球です(右手で持ち上げて紹介)。ボールのほうは、反発は変えていません。4メートルの高さから大理石に向かって落下させて、1.4メートルの反発のボールを使っています。先月、審判委員の皆さんがチェックをしてくれました。1球1球、愛情を込めて確かめてくれました。この白球を大切にしてください。一つひとつのプレーを大事にしてください」 大阪市内の日本高野連(中沢佐伯記念野球会館)には、寶会長が説明した「ボール検査」の装置がある。各メーカーが製造したボールを、一つひとつ落下させる手作業。神宮球場内にも同タイプの装置があり、東京六大学リーグ戦などが同じ工程で行っている。プレーヤーはあまり、目にしない部分。かつて京大で野球部長、監督経験がある寶会長は、元指導者の視点で、用具の尊さを訴えたのだった。 今大会48試合で用意されるのは「180ダース、2160球」であることも明かされた。単純計算で「1試合45個」である。すべてはボールがなければ大会、試合は進行しない。 「パリオリンピックで日本代表選手が『やっぱり、あきらめないで良かった』『やっぱり、続けて良かった』とコメントしていました。皆さんも苦しいことがあったでしょうが、都道府県大会で最後まであきらめず、甲子園までやってまいりました。この甲子園大会もまた、最後まであきらめない。白球とともに、皆さんの実力を大いに発揮してください。皆さんの活躍を楽しみにしています」 そして、一呼吸を置いて言った。 「頑張ろう!!」 春、夏の甲子園開会式における寶会長の「励ましのことば」は分かりやすい。だからこそ、高校球児の心にしっかりと届く。1回戦から決勝まで48試合、誕生100年の阪神甲子園球場で熱戦が展開されていく。 文=岡本朋祐
週刊ベースボール