一帯一路構想の象徴・中国ラオス国際鉄道に「思いがけない難敵」現る!?
『ゾウが線路へ侵入しようとするのに備え、早期警報システムも開発しました。専用のアプリを使って、野生のゾウの活動に関する情報をリアルタイムで受信します。ゾウが線路に近づいたら、即座に対応できます。』 中国ラオス鉄道では、開通当初から沿線に43キロメートルにわたって、ゾウが線路に立ち入らないよう線路沿いに防護柵を設置している。開通から2年半が過ぎ、最近の野生のゾウの動きから再検討して、さらに1キロ分の防護柵を増築したという。 さらにゾウ専用の通路も設置した。川のダムや堰で魚が遡上できるように、スロープ状の通路、魚道を造ることはあるが、鉄道の安全運行を確保し、同時に、ゾウを保護しようという策だろう。 ■「自然保護アピール」だけでない中国の思惑 アジアゾウは絶滅危惧種だ。野生のアジアゾウの生息頭数は世界で約5万頭いるが、象牙を取るための密猟、違法な森林伐採で生息地を追われている。 中国が自然保護に力を入れていることをアピールする目的もあるが、野生のゾウの保護とともに、鉄道の安全運行、さらにいうと、この中国ラオス鉄道が、どのように見られているかについて、神経を尖らせているような気がしてならない。 この鉄道は、ラオスにとっては初めての本格的な鉄道だ。そこを走る車両の製造も、ラオス国内の線路敷設も含め、すべて中国が請け負った。運行システム、安全システムも、ほとんどすべて中国で開発されたものだ。ラオスは中国国内鉄道網に組み込まれたと言っていいほどだ。 総工費約60億ドル(約9000億円)の7割を中国が負担、残りの3割をラオスが負担しているが、そのラオスの負担分の大半は中国からの融資によるものだ。ラオスは中国に対して、借金漬けになって「『債務のわな』に陥るのではないか」と指摘する声が、欧米にはある。 この鉄道は、中国が進める広域経済圏構想「一帯一路」にも関係している。ラオスの首都・ビエンチャンはさらに隣のタイとの国境付近に位置する。だから、ビエンチャンまで鉄道が通じれば、その先はタイの鉄道につながる。