『ザ・バイクライダーズ』に『イージー・ライダー』『M:I-2』『マッドマックス』まで!かっこいいバイク映画まとめました
オースティン・バトラー、トム・ハーディが実在したバイカー集団たちを演じた『ザ・バイクライダーズ』(公開中)。1960年代に出版された写真集にインスピレーションを得た作品で、バイクを愛し走ることに取りつかれた男たちの物語が描かれる。お気に入りのマシンで風を切る男たちの姿は、文句なしにかっこいい。そこで、バイクやバイカーがスクリーンを疾走する印象的なバイク映画を振り返ってみたい。 【写真を見る】ストッピーを披露したり、ウィリーで敵と激突したり、過激な見せ場が次から次に登場する『M:I-2 』 ■バイク映画の代表格『イージー・ライダー』 バイク映画と聞いて、まず『イージー・ライダー』(69)を思い浮かべる人は多いと思う。デニス・ホッパーが監督した本作は、自由を求める2人の若者がバイク旅行に出る物語。旅を通してアメリカの闇に直面するニューシネマの代表作だが、ステッペンウルフの「ワイルドでいこう!」の曲に乗せて気持ちよさそうに風を切るピーター・フォンダとホッパーの姿を追ったオープニングは何度観てもシアワセ気分に浸れてしまう。 ■チェ・ゲバラの若き日の旅行記を映画化した『モーターサイクル・ダイアリーズ』 キューバ革命の指導者チェ・ゲバラの若き日の旅行記を映画化した『モーターサイクル・ダイアリーズ』(03)は、2人の若者が南米大陸横断のバイク旅行を通してこの地域が抱える問題を目の当たりにする『イージー・ライダー』にも通じる作品。雪道での悪戦苦闘など旅路は険しく途中でバイクを手放してしまうのだが、見知らぬ土地を駆け抜ける若者たちの胸の高鳴りが伝わってくる一本だ。 ■レザージャッケットに身を包んだオッサンたちが楽しそうにバイクにまたがる『団塊ボーイズ』 バイク旅行といえば『団塊ボーイズ』(07)も忘れられない一本。人生に行き詰まった4人の中年男がバイクで大陸を横断する話で、ジョン・トラヴォルタ、ティム・アレン、マーティン・ローレンス、なによりウィリアム・H・メイシーという顔ぶれの純コメディである。トラブルやアクション、ロマンスをそつなくそろえた優等生だが、レザージャッケットに身を包んだオッサンたちが楽しそうにバイクに跨る姿につい頬が緩んでしまう。 ■オートバイ地上最速記録を持つバート・マンローを描いた『世界最速のインディアン』 オートバイ地上最速記録を持つバート・マンローを描いた『世界最速のインディアン』(05)は、ニュージーランドの田舎で暮らすバイク好きの老人がバイクレースに出るため、一人アメリカを旅する物語。序盤やクライマックスのレースシーンの疾走感が気持ちいい。スピード狂の老人を楽しそうに演じるアンソニー・ホプキンスも見どころだ。 ■「ターミネーター」のT-800もバイクに跨る! バイクはアクション・エンタテインメントのヒーローカーとしても鉄板のビークル。体むき出しで演じるアクロバティックなアクションは、四輪にはないスリルが味わえる。アーノルド・シュワルツェネッガー演じるターミネーターのT-800はバイクに乗ったヒーローの代表格と言える。『ターミネーター』(84)で執拗にサラ(リンダ・ハミルトン)たちを追う悪夢のような姿も印象的だが、正義の味方になった『ターミネーター2』(91)では質&量共にバイク・アクションが増量。ハーレーダビッドソンを奪うくだりから高所ジャンプ、ショットガンを撃ちながら繰り広げるチェイスなど、激しい見せ場で盛り上げた。 ■トム・クルーズのバイクアクションがとにかくかっこいい!『M:I-2』 「007」や「ジェイソン・ボーン」シリーズなどスパイ映画でもバイクは活躍しているが、ヒーローカーとして大きくフィーチャーしたのが『M:I-2』(00)である。ジョン・ウー監督は激しいチェイスを演じるトム・クルーズを得意のスローモーションを交え、「劇画か!」と思わず叫んじゃうほどドラマチックに描写。前輪ブレーキをかけながらストッピーを披露したり、ウィリーで敵と激突したりするなど過激な見せ場が次から次に登場する。『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』(15)や『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』(18)などシリーズを通してバイクの見せ場が堪能できるが、執着度は『M:I-2』が一番強い。 ■トリニティーがフリーウェイを爆走する『マトリックス リローデッド』 派手なバイクチェイスを魅せるのは男だけではない。『マトリックス リローデッド』(03)ではキャリー=アン・モス演じるトリニティーがドゥカティで激しいチェイスを見せつけた。フリーウェイで車をすり抜けながら、逆走を交えて大暴走する。1人ではなくキーメーカー(ランドール・ダク・キム)を乗せた2ケツなのもポイントが高い。ヒロイン系ではミラ・ジョヴォヴィッチの『ウルトラヴァイオレット』(06)でも派手なバイク・アクションが堪能できるが、こちらはほぼVFXなのが少し残念だ。 ■スリリングな大ジャンプが必見!の『大脱走』 番外編として紹介したいのが、第2次世界大戦下のドイツ収容所を舞台にした『大脱走』(63)のヒルツ大尉。収容所から脱走したヒルツはドイツ兵のバイクを奪って国境を目指す。スイス国境で追い詰められた末に見せるスリリングな大ジャンプは必見!不敵な笑みを浮かべたヒルツ役スティーヴ・マックイーンの演技もあわせておすすめだ。 ■アウトサイダーや犯罪者を描いたアウトロー映画の先駆け『乱暴者』 ロードムービーからアクションまでバイク映画は多岐にわたるが、メインストリームといえば社会のアウトサイダーや犯罪者を描いたアウトロー映画だろう。その先駆けがマーロン・ブランド主演の『乱暴者(あばれもの)』(53)。欲望のままに行動するバイク集団の若者たちを、彼らと取り巻く市民の視点から描いた作品で『ザ・バイクライダーズ』の劇中でも触れられている。 ■モーターサイクル・ギャング団、ヘルズ・エンジェルスに協力を仰ぎ製作された『ワイルド・エンジェル』 『乱暴者』はモーターサイクル・ギャング団、ヘルズ・エンジェルスを題材にした最初の劇映画だが、彼らに協力を仰ぎ製作されたのがB級映画の帝王ロジャー・コーマンが監督時代に撮った『ワイルド・エンジェル』(66)だ。コーマンは無軌道な彼らを反体制の旗手として映画化。チョッパーに乗るリーダーを演じたピーター・フォンダのイメージは、3年後の『イージー・ライダー』に受け継がれた。 ■欲望のまま破壊や暴行を繰り返すバイカーたちを描写した『マッドマックス』 暴力が支配する数年後の未来を描き、世界を席巻したのがジョージ・ミラー監督のオーストラリア映画『マッドマックス』(79)。ミラーは欲望のまま破壊や暴行を繰り返すバイカーたちをフィクションとは思えないリアリティで描写した。暴走軍団はシリーズを重ねるごとにスケールアップしていくが、感情の赴くまま凶行を重ねる第1作の不条理な姿はいまだ戦慄を禁じ得ない。 ■ウィレム・デフォーのバイカー姿がかっこいい!『ストリート・オブ・ファイヤー』&『ラブレス』 『ストリート・オブ・ファイヤー』(84)にはフィクションとしての暴走軍団が登場する。本作のボンバーズは、獲物を求め大群で街に現れては大暴れして根城に戻る西部劇や時代劇の盗賊団のような存在。馬の代わりにハーレーダビッドソンに跨った、ヒーローと様式的な一騎打ちを繰り広げるリーダーをウィレム・デフォーが憎々しげに演じている。デフォーはジェームズ・キャメロン監督の元妻キャスリン・ビグローの『ラブレス』(81)でもバイカー軍団のリーダーを好演。バイクシーンは少ないが、革ジャンにリーゼントでハーレーを操る姿は文句なしにかっこいい。 ■バイク乗りがコンビで麻薬組織と戦う『ハーレーダビッドソン&マルボロマン』 アウトローのバイク野郎は集団だけではない。『ハーレーダビッドソン&マルボロマン』(91)は、荒くれ者のバイク乗りがコンビで麻薬組織と戦う痛快アクション。バイクチェイスや格闘、ガンアクションと見せ場が満載のハリウッドらしいエンタメ作だ。主演は『ランブルフィッシュ』(83)でもバイク乗りを演じたミッキー・ローク。彼の役名がタイトルのハーレーダビッドソンで、シルバーのカスタムハーレーに乗っている。劇中でバイクをガンガン乗り回すわけではないが、オープニングをはじめバイクシーンはどれも殿堂レベルのかっこよさだ。 ■CGを駆使したかっ飛びチェイスが「ワイスピ」につながる『トルク』 「ワイルド・スピード」シリーズを製作しているニール・モリッツがプロデュースした『トルク』(04)もバイク野郎がギャングに挑むアクション作。バイクを曲乗りしながら格闘するなど、CGを駆使したかっ飛びチェイスは「ワイスピ」の元祖と言える。 ■時代の変化に呑まれていくバイカーたちの哀愁を描く大人のバイク映画『ザ・バイクライダーズ』 バイク映画の最新作『ザ・バイクライダーズ』は、実在したシカゴのアウトローズ・モーターサイクル・クラブ(劇中ではヴァンダルズ)の物語。リーダーのジョニー(ハーディ)と弟分である無口なベニー(バトラー)を軸に、変わりゆく時代の変化に呑まれていくバイカーたちの哀愁が描かれる。バトラー、ハーディのほか、マイケル・シャノン、ノーマン・リーダスといった渋いキャスティングや60年代を再現したノスタルジックな世界感、ほろ苦い結末も魅力の本作。これまでの作品とはひと味違う、大人のバイク映画をスクリーンで味わってみてはいかがだろうか。 文/神武団四郎