「体験格差」拡大のウラで、意外と知られていない「青少年教育施設」減少という現実
習い事や家族旅行は贅沢?子どもたちから何が奪われているのか? 低所得家庭の子どもの約3人に1人が「体験ゼロ」、人気の水泳と音楽で生じる格差、近所のお祭りにすら格差がある……いまの日本社会にはどのような「体験格差」の現実があり、解消するために何ができるのか。 【写真】子ども時代に「ディズニーランド」に行ったかどうか「意外すぎる格差」 発売たちまち6刷が決まった話題書『体験格差』では、日本初の全国調査からこの社会で連鎖する「もうひとつの貧困」の実態に迫る。 *本記事は今井悠介『体験格差』から抜粋・再編集したものです。
体験の場を支える
改めて言うまでもないことだが、指導者によるハラスメントや不適切な安全管理などによって、「体験」の場で子どもたちの権利が侵害されるということはあってはならない。コーディネーターが置かれた場合、かれらはそうしたリスクのある利用先に子どもたちをつなぐべきではない。
提案4:体験の場で守るべき共通の指針を示す
子どもに「体験」を提供するすべての大人が守るべき共通指針やルールを打ち立てる必要があるだろう。国際NGOの中には、「セーフガーディング・ポリシー」という形で子どもと関わるスタッフが必ず遵守しなくてはならない項目(虐待や差別の防止、問題発生時の報告や再発防止など)を定め、支援を受ける側の子どもたちに対して自身の安全や尊厳、権利について教えている団体もある。 こうした考え方が、「体験」支援の現場においても必要ではないだろうか。体験の「担い手」である団体やその指導者、保護者や子どもたちに対して、守られるべき指針を示し、子どもの権利について学ぶ機会やツールを提供する。 権利侵害や事故をできるだけ予防しつつ、万が一のことがあった際の対応方針を策定することも重要だ。様々な困難を抱える家庭の子どもを受け入れるうえで必要になる知識や理解の底上げもなされるべきだろう。 ただし、それぞれの「担い手」はあくまで、個別の事業者や個人、その集まりであり、行政やNPOが一方的に管理するような対象ではない。しかし、例えば先に触れた体験の費用に活用できるクーポンの利用先に選定される条件として、行政やNPOが一定の指針の遵守を求めるという形はあり得るだろう。 また、コーディネーターが親や子どもとつながりを持つことで、指導者らによる人権侵害のリスクが抑制され、それが起きた際に発覚しやすくなるといった効果も期待したい。