J1湘南・鈴木雄斗がドハマリした「高配当株投資」の醍醐味
アスリートでありながら、投資家としての意識を持つ「アスリート投資家」たちに、自らの資産管理や投資経験を語ってもらう連載「 アスリート投資家の流儀 」。水戸ホーリーホックを皮切りに、モンテディオ山形、川崎フロンターレ、ガンバ大阪、松本山雅、ジュビロ磐田と全国各地のJクラブを渡り歩き、今季から湘南ベルマーレでプレーする30歳の右ウイングバック・鈴木雄斗選手の第3回です。 2020年のコロナ禍で思いがけず生まれた時間を有効活用し、投資を積極的に学び、トライ&エラーを繰り返した鈴木選手。そんな彼が「自分に最適な投資法」だと感じたのが、「高配当株投資」でした。 過去に本連載に登場した 元Jリーガーの鎌田次郎さん (現カマタサッカースクール代表)も、『オートモードで月に18.5万円が入ってくる「高配当」株投資』(著:長期株式投資)や『年間100万円の配当金が入ってくる最高の株式投資』(著:配当太郎)などを参考にして、投資先や銘柄を探ったと語っていましたが、鈴木選手も書籍やX(旧Twitter)などで情報収集し、最適な銘柄を日々、物色していると言います。 もちろん本業のほうも今季J1で29試合にフル出場し、1ゴールをマーク(9月14日終了時点)。湘南の山口智監督からも絶大な信頼を寄せられています。猛暑の夏場をタフに戦う中、空いた時間を有効活用し、将来に備えている鈴木選手のアプローチをより詳しく聞きました。 ■高配当株投資は「ポケモン」みたい ――ジュビロ磐田に移籍した2021年から本格的に高配当株投資に目を向けたという鈴木選手ですが、大事にしていることはありますか。 鈴木:「応援したい会社」を見つけることですね。企業業績や配当利回りを見ながら、興味がある銘柄・セクターはひととおり買い付けました。配当利回りは3%以上は欲しいところですけど、仮に最初が2%台後半だったとしても、長く持ち続けて利回りが上がっていくのが楽しみになっています。 ある意味、「ポケモン」をやっているような感覚ですね(笑)。会社が育っていくのがうれしいですし、配当が増えていけば、その分、自分が手にする配当収入も上がる。そういう意味でも、長く応援したい会社を探して、持ち続けていくのがすごくいいと僕は思います。 ――7月までは日経平均株価が4万円を超えるなど、右肩上がりの相場が続きました。そうなると「今が売り時なんじゃないか」と迷ってしまうこともありますよね。 鈴木:そうなんです。配当太郎さんは「持ち続けてください」と言っていますけど、値上がり益が1銘柄につき100万円を超えてくると、どうしても売却したいという思いが膨らんでしまいます。業績が好調で、増配を発表して、株価も上がってくると、「値上がり益で配当のいくら分が取れただろう?」と考えてしまうんですよね。 例えば、三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)を株価が700円くらいだった2022年初頭に買って、そのまま持ち続けていれば配当利回りも5%まで上がっていたのですが、かなり前に売却してしまいました。三井物産(8031)やJT(2914)にしても似たような感じです。結果的に投資リターンがプラスになっているのでいいんですけど、自分にはまだ「ゴリラ握力」がないですね(苦笑)。 ――誰しも「利益確保を優先したい」という思考が働きますからね。その気持ちはよくわかります。 鈴木:Xでフォローしているマジカルさんは、数カ月前に日本株が市場最高値を更新してから4万円割れになったときに「今は暴落と騒いでいてはダメ。大事なのは株数です」と言っていました。それは自分にすごく響きましたね。高配当投資を志向している以上、目先の利益を追うのではなく、株数や配当金を大事にしていかないといけないと肝に銘じました。 いずれにしても、高配当株投資は長く持って初めて成果が出るものなので、「今は絶対に売らない」という意思を強く持つために、配当太郎さんの2冊目の本である『新NISAで始める!年間240万円の配当金が入ってくる究極の株式投資』を読んで、気持ちを鼓舞しているところです。 ■投資に関する情報はXを参考に ――今は為替の変動が大きく、11月に控えているアメリカ大統領選挙の行方などもあって、先行きを見通すのは難しいところですが、鈴木選手が注目している業界や銘柄はありますか。 鈴木:ウォーレン・バフェットさんが持っている商社株は買うかどうするか迷っています。これまでに三井物産は買ったことがありますけど、今は三菱商事(8058)が少し気になっています。 いずれにしても、大切なのは業績です。営業利益とか経常利益とかいろいろなデータがありますが、僕は純利益を重視しています。その企業が最終的にどれくらい稼いでいるのかがわかる指標なので、信頼感があります。 そういう情報もXで細かくまとめてくれている人がいて、本当に助かります。そういう人たちをフォローしていれば必要な情報が入ってくるので、今の時代は本当にありがたいですね。 ――それ以外の情報収集手段は? 鈴木:SBI証券の銘柄情報を見ることも多いです。ただ、株を保有している会社の決算発表が15時と言われても、試合や移動、体のケアなどに行っていて、その時間にチェックできないこともありますから、そういうときはあとからまとめて見て、どうするか考えたりしますね。 僕らサッカー選手はずっとパソコンやスマートフォンに張り付いていられないので、瞬間的な対応はできませんし、そういうのは合っていない。そういう意味でも、長期保有がベースの高配当株投資は自分に合っていると思います。 今後は『会社四季報』を読めるようになりたいですね。本はすごく分厚いので、オンラインは便利かなと。それもいろいろな人がXで発信しているので勉強していこうかなと思います。 ■若いうちから読書をしておくことも大事 ――湘南ベルマーレにはこの連載に登場していただいた山田直輝選手も在籍していて、マネーについて前向きに学んでいる人が多い環境です。それも鈴木選手にとってはプラスでしょうね。 鈴木:そうですね。今まで僕はいろいろなチームに在籍してきましたが、そういう話をオープンにできる環境とそうでない環境がクッキリ分かれていました。今年からベルマーレに来たんですけど、勉強熱心な人が多いのはありがたいですね。 僕自身は投資をスタートしたのは25歳を過ぎてからですけど、若いうちから知識を持っておくことは大切だと思います。チームには読書をしない選手も結構いるので、マネーや投資に限らず、本を読むことを勧めています。 つい最近も、町田ゼルビアにレンタル移籍した杉岡大暉選手に子育て本を勧めました。自分が知らないことに出会える読書は本当に意味があることです。彼は結局、サッカー選手の自伝を読むようになったみたいですけど、それもまたすばらしいことだと思います。 若いうちは自分と同じことをやっている人にだけ目を向けるのも楽しいですけど、人生は長いし、本を通じていろいろな世界をのぞけるチャンスを逃すのは本当にもったいない。僕は母親がそういう感覚を持っていた人なので、すごく影響を受けています。マネーや投資に興味を持てたのも、そのおかげですね。サッカーで結果を出すことを最優先に考えながら、これからもいろいろなことに興味・関心を示していこうと考えています。 自分の仕事であるサッカーでフル稼働しながらも、それ以外のときには家族を大事にしたり、投資を実践し、子育てなど他ジャンルの本も読むという鈴木選手。その視野の広さは多くの人々が学ぶべきかもしれません。 その鈴木選手はここからの現役生活、引退後の生き方とセカンドキャリアの構築をどうイメージしているのでしょうか。最終回の次回はそのあたりを語っていただきます。 元川 悦子(もとかわ・えつこ)/サッカージャーナリスト。1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、1994年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。著書に『U-22』(小学館)、『初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅』『「いじらない」育て方 親とコーチが語る遠藤保仁』(ともにNHK出版)、『黄金世代』(スキージャーナル)、『僕らがサッカーボーイズだった頃』シリーズ(カンゼン)ほか。 ※当記事は、証券投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。
元川 悦子