次世代産業を育てるために「スタートアップと中小企業のエコシステム」 馬田隆明氏インタビュー
新産業創出、地方にこそチャンス
まちづくりの観点でいうと、現状、スタートアップは東京に集中していますが、ハードウェアを扱うスタートアップの場合、地方にチャンスがあると感じています。一つ目は、製造業のサプライチェーンやインフラが確立していること、二つ目は地方の大学の技術を活かせること、三つ目は需要地に近いという特徴があるからです。 たとえば、温暖化の原因とされる牛のげっぷに含まれるメタンガスを減らす効果を持つ「海藻」の量産化に、高知大などの研究グループが成功し、技術を継承したスタートアップ企業「サンシキ」が設立されました。 起業家は東京、技術や生産は地方という組み合わせです。 牛は北海道と九州に多く、そうした需要地の近くで海藻を量産することにはメリットがあります。Climate Techと地方の組み合わせには可能性があるのです。 いくつかの石炭火力発電所の跡地で、あらたなビジネスを立ち上げようという動きもあります。火力発電所跡地は送電容量の大きい設備が残っているなど初期投資を抑えた事業開発がしやすいという特徴がありますし、その地域での新たな雇用にもつながります。 Appleなどがそうであるように、サプライチェーン全体にカーボンニュートラルを求めてくるグローバル企業が今後も増えてくると考えられます。そうなったときにグリーン電力の供給量の多い地域は、様々な産業を誘致しやすくなるかもしれません。
地方の産業政策に欠かせぬ中小企業
スタートアップを中心とした新しい産業を地域内で興せると、利益率の高いビジネスを展開することができます。 日本は今後ますます労働力が不足していきます。そのなかで、産業構造を変えて、付加価値の高いビジネスを生み出すためには、「スタートアップと中小企業のエコシステム」をつくる産業政策が必要になるのではないでしょうか。 産業政策は本来、行政の役割ですが、行政だけでできることでもありません。そこで地域の核となる企業の後押しが欠かせません。20~30年先を見据えて、地域でどんな産業を育てていくべきか、地元の中小企業が連合を組んで考え、様々な産業でスタートアップとの連携を模索してほしいと考えています。
杉本崇