次世代産業を育てるために「スタートアップと中小企業のエコシステム」 馬田隆明氏インタビュー
急成長スタートアップに必要な周辺の企業群
日本は、経済複雑性指標(Economic Complexity Index、ECI)で長く世界一を維持し続けており、世界的にみても、技術や製品の多様性を持っている国だとも言えます。日本国内で多くの部品がそろうのです。 ある海外のスタートアップも必要な技術を求めて、日本に部素材を発注していると聞いたことがあります。これからスタートアップが新しい製品を世に生み出すうえで、エンドツーエンドで製品をつくるポテンシャルのある日本には強みがあると言えるでしょう。 Salesforceなどのプラットフォーム企業は、売上高が1000億円を超え、プラットフォームの機能が複雑化しはじめたタイミングで、コンサルタントなどの周辺事業が生まれてきたと言われています。 SpaceXやTeslaのような企業まで成長すると、その周辺にいくつもの企業が生まれ、高付加価値な雇用も生み、産業として成長していきます。 こうした急成長する「ハイグロース・スタートアップ」がなければ、関連産業も生まれませんが、逆に言うと、周りに企業群がなければ、中心となる「ハイグロース・スタートアップ」も生まれません。 「ハイグロース・スタートアップ」を生み出す支援をするなかで、スタートアップだけでなく、中小企業やNPOも含めたエコシステムを作り上げることの必要性を感じています。
裾野の広い産業を育てるには
たとえば、電気自動車(EV)は裾野の広い産業です。車の部品に限らず、EVチャージャー、メンテナンス、バッテリーリサイクル、場合によってはHEMS(Home Energy Management System:ホーム エネルギー マネジメント システム)まで、関連産業は多様です。 小売店にも影響があります。アメリカで2024年に発表された論文「Recharging Retail: Estimating Consumer Demand Spillovers from Electric Vehicle Charging Stations」は、EVの急速充電器周辺の小売店の店舗の月間訪問者数が平均4%増加したと推定しています。 今後、そうした経済効果も見込みながら、社会のインフラが変わっていくことになるでしょう。実はEVはまちづくりにも影響してくるということです。