1979年、広島戦で池谷公二郎から三振する虎のスタントン。34試合連続三振の日本記録保持者だ

朝、テレビを見ていたら、阪神がドラフト3位で指名した木下里都投手（KMGホールディングス）が出演していた。ハキハキと話す姿は好感が持てた。プロとして「言葉で伝える」は大事な要素だ。 でも、衝撃的な話をしていた。村上宗隆という強打者が「ヤクルト」というチームに所属していることは知っているが、ヤクルトがセ・リーグなのか、パ・リーグなのか、よく分かっていないという。 あの日本中を感動の渦に巻き込んだワールド・ベースボール・クラシックも「（決勝戦の）最後に大谷選手がガッツポーズした瞬間だけ」映像で印象に残っているが、それ以外は全く見ていなかったそうだ。 「野球はやるもので、見るものではない」という思考の持ち主らしい。これは相当に面白いキャラがやってくる。セもパもないのなら、誰がどの球団所属なのかを、どこまで把握しているのだろうか。相手が誰であろうが、どこの球団であろうが、抑えたら勝ちだが。 近日中に、わが社の精鋭トラ番が不思議なベールをはいで（？）ニューヒーロー候補を紹介してくれるはず。楽しみに待ちたい。 その珍問答からチャンネルを変えると、ワールドシリーズの壮絶な死闘だ。逆転サヨナラ満塁ホームランでの決着。こんな劇弾をナマで目撃した人は、一生自慢できる。 89年に及ぶ長い歴史を誇る阪神でも、逆転サヨナラ満塁弾を放ったのは、実は1人しかいない。1956年6月24日（広島戦）の藤村富美男だけ。68年前の初代ミスタータイガースの衝撃を、果たしてどれだけの方が記憶しているか。米の頂上決戦はそれほどレアな幕切れだったのだ。 当番デスク・長友孝輔も、出勤前に食い入るように見ていた1人。 「あの直前に、ヤンキースのレフトが大ファインプレーで大谷の邪飛を捕球して、そのままスタンドに飛び込んだでしょ。普通、あんなプレーが出たら、流れを引き寄せて勝ちますよね」 ところが、捕球後にスタンドインしたために、走者に進塁権が与えられ、さらに満塁策になって…という展開に「勝負のアヤですよね。飛び込んだすぐ横はネットが張られていて、あそこなら飛び込むこともなかったわけですから。まさに、アヤです」と感慨深げ。 確かに、勝負の世界はアヤだらけだ。日本でもシーズン終盤に広島が球史に残る失速をしなければ、DeNAは4位以下に終わり、下克上の権利は得られなかった。さらには、阪神の〝監督騒動〟がなかったらクライマックスシリーズの結果は…。すべて含めて勝負の世界。だから面白い。