【小児科医が解説】絶対に見逃してはいけない、中学受験をやめさせるべき子どもの「SOSサイン」
首都圏の2024年の国立・私立中学受験者数は過去最高の18.12%に達し、小学生の子供を持つ家庭で、中学受験を検討することは珍しいことではなくなってきた。しかし、「子どもの将来のため」という親の一方的な思いや過剰な期待が、子どもの心や体に悪影響を与えることも。小児科医の成田奈緒子氏は、子どもが受験で苦しんでいるのにもかかわらず「甘やかさず、立ち向かうことが大切」という親の姿勢に警鐘を鳴らす。※本稿は、成田奈緒子『中学受験の落とし穴――受験する前に知っておきたいこと』(筑摩書房)の一部を抜粋・編集したものです。 【この記事の画像を見る】 ● 大事なのは受験の成功ではなく 「こころの脳」の成長 中学受験で失敗しても、その子の人生が狂うとか、ダメになるということは決してありません。地元の公立の中学校や高校に進んで、お金もかからず、子どもへの過度のプレッシャーもかからず、自ら目ざめて勉強し始めるケースもあるのです。そういうことも想定して、我が子には受験をさせるかどうか、考えてほしいものです。受験にかけたお金を、親自身の自己充実のために使い、余裕をもって子どもを見守るほうが良い場合もあります。 ある子は、小学3年生から塾に通い始め、5年生からは週4回、夜遅くまで授業を受けるコースに入った。これだけでも課金量はグッと上がりますが、さらに自宅では勉強しないからと、土曜、日曜の日中は有料自習室を勧められて、そこにも通わせた。遠方なので、親が必ず送り迎えをして。そこまでやって、ある私立中学には入ったものの、入学後に自主的に勉強に向かうことがなかったそうです。
その子はその後、自分では行きたい大学を決められず、やはりお母さんの意向で専門職に就くための大学を受験させられ、入ったものの、半年ほどで嫌になって退学してしまいました。大学を自分の意思でやめて以降、自意識が芽生えたのか専門学校に入り直し、現在では、得意な接客を生かした仕事を生き生きとしています。 偏差値や受験に振り回されたケースのように見えますが、最終的に自分のやりたいことにたどり着けて良かったと思います。この例のように、本人の「こころの脳」(編集部注/論理的思考と問題解決能力を司る前頭葉)が育ち、「母のコントロール下にいてはいけない」とハッと気づいたときから、自分の人生を模索すればそれでいいのです。 ● 親が持つべき最も重要な軸は 子供を健やかに生かしておくこと 子どもが自分の人生の軸をしっかり作っていくためには、まず親がしっかりとした軸を持つことが大切です。親が、偏差値などのランキングや自分のかけた時間やお金といった目先のことに惑わされていては、子どもも自分の軸を作ることができません。