モーツァルトの出世作! オペラ『後宮からの逃走』制作の背景とは?【クラシック今日は何の日?】
クラシックソムリエが語る「名曲物語365」
難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。
モーツァルト オペラ『後宮からの逃走』 ドイツ語オペラの先駆けとなったモーツァルトの出世作
今日7月16日は、モーツァルト(1756~91)のオペラ『後宮からの逃走』の初演日です。 オーストリア皇帝ヨーゼフ2世からの依頼によって作曲されたこの作品は、本来、ウィーンを訪問するロシア大公の歓迎式典のための作品であったところが、訪問が延期されたために、曲の構成を練り直して、1782年7月16日に、ウィーンのブルク劇場で初演された、モーツァルト20代後半の名作です。 初演の成功は、ザルツブルクからウィーンに移住したばかりのモーツァルトの名声を確立したのみならず、ブルク劇場でドイツ語オペラを成功させたいという、皇帝の長年の望みを果たすものでもありました。当時のオペラの主流はイタリア語だったのですね。このあたりの経緯は、映画『アマデウス』に面白おかしく描かれていますので、興味のある方はぜひご覧ください。 オペラの舞台はトルコ。そして、現代に通じる2つの宗教の異文化理解がテーマとして盛り込まれているあたりも成功の理由だったようです。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。
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